ふたご座
断層とその臭い
あの世では目より鼻が頼りになる
今週のふたご座は、むせかえるような濃厚な土のにおいのごとし。あるいは、なぎ倒されるように大地に倒れ込んでいくような星回り。
都心ではなかなか感じないですが、今でもすこし郊外に足をのばし、断層が地上へむきだしになっている土地や山野などを歩いていると、濃厚な土の臭いに出合うことがあります。
ちなみに占星術では、世界の構成要素=エレメントとして「火地風水」の4つを取り上げますが、そこで論じられる「地」は堅固さや安定性の象徴であり、ここで言及している土臭い土とは少し、というかまったく異なります。
それは農夫などが「泥にまみれて生活する」と言う時の、大自然との根源的な親近性の象徴であると同時に、生活空間にはもたらされるべからざる忌々しきものの象徴でもあるという相矛盾する感情を引き起こすもの。豊穣性の起源である一方で、生あるものが腐敗し、死の世界におもむく際の舞台でもあるきわめて両義的な“他者”として人間の傍らにありつつ、その臭いをかぎ、直接触れたものに、都会のコンクリート群落に反逆せよと語りかけるのです。
17日にふたご座から数えて「深淵・奈落」を意味する4番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの根源的矛盾性に立ち返っていくにあたって、差し当たりそうした意味での“土”の臭いをかぎ分けるべく、鼻を利かせていくことができるかどうかが問われていくでしょう。
夢と現実の表裏一体
西脇順三郎の「旅人かへらず」という詩に、次のような一節があります。
旅から旅へもどる
土から土へもどる
この壺をこはせば
永劫のかけらとなる
旅は流れ去る
手を出してくまんとすれば
泡となり夢となる
夢に濡れるこの笠の中に
秋の日のもれる
平地の日常に生きる常民と、海や山をかけ巡る旅人と。どちらが夢で、どちらが現実なのか。あるいは、それはコインの裏表のように、ときどきひっくり返されるだけで本来ひとつのものなのかも知れませんね。
古来より、作物が収穫される秋は、モノとともにヒトもまた動く季節とされてきました。本格的な秋の訪れとともに、意識のモードも切り替えていくといいでしょう。
今週のキーワード
割り切れない謎としての大地