ふたご座
運命の交錯
ずるずると
今週のふたご座は、「蜥蜴の交尾ずるずると雄ひきずられ」(田川飛旅子)という句のごとし。あるいは、タガを外して存分に誰かと相対していこうとするような星回り。
ここでは二匹の蜥蜴(とかげ)の交尾の様子が詳細に描き出され、特に「ずるずると」という副詞の効果にって、ごく小さい生物のはずの蜥蜴がぐんと大きな実感を伴って迫ってきます。
メスに抵抗もむなしく引きずられていくオスという構図は、人間界でのマジョリティーと対照をなしており、掲句ではそこに苦いユーモアが投影されているように感じられますが、それは作者が男性だからでしょう。
凹凸のある土の上、ないし石やコンクリートの上を無理やり引きずられていく際の強い摩擦を連想させる「ひきずり」は、そのまま女性性の根底にあるものを無力化せんとする構造的暴力への怒りの表明であり、そうした構造をかき乱してしまうような悪魔性の不意の表出でもあるのかも知れません。
いずれにしても、相手の抵抗が強いほどに、その感触は身体の深いところにまで響きわたり、浸食してくるのです。
7月5日にふたご座から数えて「痛感と浸透」を意味する8番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分の全力をぶつけられるような手応えを模索していくはず。
交流の味わい
ひとりの人の後ろには、いろいろな人の運命が交差していて、しかしだからと言って、やっぱり他人ですから、関わっている相手がどんな人間なのか、どんな運命なのかは、みなつかみ切れないまま、うすぼんやりとしています。
そのことを真面目に考えすぎると、気味が悪くなってくるかも知れませんが、そもそも他人なのですから、理解できてなくて当然なのだとも言えます。
ひとりの人間が自分の運命について語りだせば、その親や祖父祖母、兄弟姉妹、友人、恋人、同僚、上司、顔も知り程度の知り合いなどが、さまざまにその人の像を浮かべ始めます。分からないのは当然ことながら、この世に生きているということの醍醐味は、そうやって生きた交流を通して、互いの運命を明確にしていくことにあるのだとも言えます。
今週のふたご座は、冷静に淡々と、ユーモアとシリアスのあいだに立って、そうした生の醍醐味を味わい、寄り添っていくべし。
今週のキーワード
袖振り合うも他生の縁