ふたご座
突破者たれ
想像力と錬金術
今週のふたご座は、読書の効用のごとし。あるいは、想像力を通して小さな真実を補完し合い、それらを混ぜることで新たな真実をこしらえていくような星回り。
本を読む醍醐味というのは、しばしば麻薬のトリップに似ています。それについてかつて寺山修司は、「想像力による出会い、旅、抽象化、価値の生成といったものが、“それ自体”の力を大きく超えてゆくことになるから」(『青蛾館』)だと述べていました。
「それ自体」とは、実際に書かれていた文字列のことであり、あるいは単に作者が本の中で言わんとしていたことだとも言えます。そこに読者が想像力によってみずからの体験や感情、思いを浸し、織り込み、交わらせていく働きかけを通して、まったくの別物へと変容を遂げていくのです。
当然、読者自身もそれに合わせて変容していくので、読書の効用はまずもってその変身作用にあるのだと言えます。ただ、それは思い通りの変身というより、一種のギャンブルでもあるから、そのまま事件へと発展してしまうことだってありえます。
人間は欠落だらけの真実しか持ち得ないし、本だってとても小さな真実の断片に過ぎないですが、それでも読書はいつのまに別の真実を与えてくれるのです。
週明け5月11日に、ふたご座から数えて「小さな死」を意味する8番目のやぎ座で、土星の逆行(常識の反転)が起きていく今週のあなたもまた、そうした一種の融合体験を欲していくだろうし、そこに自分を賭けてみたくなるはず。
月並を破る
たとえば言葉の芸術である俳句の世界では、最悪の評価を下すとき「月並(つきなみ)」という言葉を使います。これは表現があまりに記号的だということ。つまり、あるリアリティーがあって、それを表そうとするときに使う言葉が通り一遍の定型に収まってしまったり、使っているはずの言葉の方に振り回されてしまって生々しさや自然さが伝わってこないとき、その表現は月並になものになってしまっている訳です。
この記号化のプロセスというのは、本を読んだり、誰かに影響を受けたり、もっと言えば生きて何かを経験していく中で必ず起こってくることですが(中途半端な満足)、逆に言えば、「月並を破る」ことで記号化された実感が再び生々しさを取り戻す瞬間こそが芸術に触れる喜びであり、生そのものを深めてくれるのだと言えます。
日常の景色のなかに新たな価値を見出し、そのこと自体を楽しんでいくことができるか否かは、記号化された体験の定型パターンで満足できないところまで行けるかどうかにかかっています。ここが今週のふたご座の焦点にもなってくるのではないでしょうか。
今週のキーワード
一回性の神秘