ふたご座
古代から来た未来人
永遠の旅人に連なる
今週のふたご座は、「百代の過客しんがりに猫の子も」(加藤楸邨)という句のごとし。あるいは、歴代の旅人の末端にみずからもまた加わえていくような星回り。
「百代の過客」とは松尾芭蕉の「おくのほそ道」冒頭に登場する‟月日”を喩えた有名な一節で、「永遠の旅人」の意。そして芭蕉もまた古人の例によらず、老いを迎えてもこの「旅人」に誘われるようにして旅立っていった。
掲句では、そうした歴代の旅人たちのしんがり(最後尾)に一匹の子猫までもあえて含めることで、その生きる世界の厳しさと愛隣の情とを同時に表現することに成功している。
しかしここで留意しなければならないのは「も」の一字。つまり、こんなにも愛らしい子猫さえも行くなら、当然のこと自分も行くのだ。
どこへ行くか。それは、芭蕉が「おくのほそ道」を通して俳句の世界の深淵へ入っていったように、それぞれの境地を深めていくための細くかぼそい旅路を行くのである。
3月22日に試練と課題の星である土星が、ふたご座から数えて「巡礼」を意味する9番目のみずがめ座に入っていく今週のあなたもまた、人生についての学びや探究が一つの仕上げの時期に入ったことをまざまざと実感していくはず。
歴史に深い根をおろす
ものの本を読んでいると、どうも生物というのは、古生代末期に約1億年をかけて、海から陸への上陸と撤退のドラマを繰り返してきたという歴史を持っているそうですが、今でも地上に生きる生物というのは、かつてそうだったように「海」から這い上がっていく者と、再びそこへと還っていく者とに分かれるように思います。
つまり、系統発生を繰り返しつつ、一定の割合で淘汰された役柄に自分を重ねていく人たちがいるのです。もちろん、ここではそのどちらが成功であるとか、あるいは失敗だとか、そういう野暮なことを言うつもりはありません。
陸地が居心地が悪くて海に還っていった歴史に、たまたまシンパシーを感じ、波長があった。それだけのことなのでしょう。けれど、覚えておいて欲しいのは、共感は自分の未来を創る力強い第一歩なのだということ。
歴史への自覚的な共感は、深い根となって、未来へ大輪の花を咲かせていくための大切な滋養となっていくでしょう。いずれの道であれ、もともと旅をするということは、後戻りできない進化の潮流へと足を踏み入れていくための通過儀礼なのかも知れません。
今週のキーワード
未来は過去の中にある