ふたご座
親密圏のデザイン
月の裏側
今週のふたご座は、「校門を出て妻となる春霞」という句のごとし。あるいは、自分にとっての「親密圏」の望ましい姿がぼんやり目に浮かんでくるような星回り。
「春霞」とは、春になると気中の水蒸気の量が増え、景色がまるで薄雲がかかったようにぼんやりと見える状態のこと。
句の作者、雨宮更聞の奥さんは小学校の先生をしており、定年間際まで勤めあげたのだという。校門の中では子どもたちの先生、家に帰れば妻。いわば二重の生を生きてきた訳だ。
ただその境界線ははっきりとはしておらず、「春霞」という語もあいまって、どこか二人のまったくの別人が同じ名前を使ってそれぞれの持ち場ですり替わっているかのような連想を誘う。
おそらく、作者にとって「妻」とはそういうものであり、自分がふだんほとんど知らない仕事の顔を持っているがゆえに尊い存在だったのではないか。
10日にふたご座から数えて「心地よい私的領域」を意味する4番目のサインであるおとめ座で満月を迎え、同じタイミングで水星が順行に戻っていく今週のあなたもまた、自分にとってどんな関係が価値を持ち、押さえておくべき節度がどこにあるのか、ということに一つのケリをつけていきたいところ。
自由な海に島ふたつ
思い返すと3.11の後、日本ではやたらと「絆」という言葉が流行った。確かに自然発生的にフッと生じてくる分には美しく感じることもあるが、相手や周囲から強制的に押しつけられた時にこれほど嫌な言葉も他にないだろう。
それで、なぜこれほどまでに嫌に感じるのかと考えてみると、絆というものが陸地的な発想のものだからかも知れない。
つまり、橋をつくって、孤立した島(人間)同士をがっりちと結んでしまいましょう、安全な陸地を拡大していきましょうと。そうやって明治以降の東京は、わずかに残っていた水路もつぎつぎに暗渠にして、街そのものを巨大なコンクリートのかたまりのようにしてきた。
島のように孤立していたとしても、ときどき行ったり来たりする舟が出ていれば、それで十分じゃないか。そんな海洋民的な発想さえ持てなくなってしまったがゆえの、「絆」の押し付けだったのではないか。 その意味で今週のふたご座は、島と島、人と人との間に広がる海を、もう一度発見しなおしていくことがテーマなのだとも言えるだろう。
今週のキーワード
関係における流動性と固定性