ふたご座
ひらりほろり
猫は煙のように
今週のふたご座は、「冬空や猫塀づたひどこへもゆける」(波多野爽波)という句のごとし。あるいは、何かから逃げることで、別の何かを得ていくような星回り。
世の中の人間は、猫を愛する人と、犬を愛する人とで二分できるのではないかと思います。性別で多少の違いはあろうとも、猫はすべて女性的であり、犬はすべて男性的で、猫を愛する人は、その女性的なものの中に含まれる柔軟性や妖変性を愛しているのかも知れません。
掲句にも、そうした猫のもつ感覚体が出ていて、作者はきっと自分が猫を愛してしまっていることに半ば戸惑いつつも、どこかで楽しんでいるのでしょう。
ひらりと塀にのぼって、まるで軽業師のように音もたてずに自由に行き来する猫。そして、どこへ行ったのか忽然と塀から姿を消してしまう。その塀の上を、冬空が雲を低く垂れて、どこまでも広がっている。その雲のうちのどこかに、猫を隠してしまっているようでもあり、また煙のように消えた猫が雲の一部に溶け込んでしまったかのようでもある。
21日(木)にふたご座の守護星でもある水星の逆行があけ、順行(通常運転)に戻っていく今週のあなたは、そうした猫の自在性や冬空のもつ得体の知れなさを肺の奥まで吸い込み、一体化していくなかで、ひらりほろりと何かがほどけていくのを感じていけるのではないでしょうか。
自分の土俵から逃げ出そう
得てして人は自分の好きなことや得意な面から、自らの存在価値を見積もりがちですが、それだけではいくら経験や知識を蓄積してもアマチュアの域を出ていけないし、そういう人が作り出すものも、本当の意味でクリエイティブなものとはなりえないのだと思います。
創造性とか、創意工夫というのは、むしろそうした自分のよく知る土俵から「逃げる」ことに成功したとき、後からついてくるものであって、大抵の場合は、ジッとしていながら夢を見ているに過ぎません。
そして日本社会というのは、そうした「忠犬ハチ公」的なストーリーを人に押し付けがちでもあります。
ふたご座のあなたまで、そこに同調しなければならない理由はないのです。煙のように、猫のように。どんな隙間であってもスルリと体を入れて、しなやかな身のこなしで、塀の外へととび出して、アウェイの土俵に入っていくことを楽しんでいきましょう。
今のあなたならば、「自分の土俵」の抜け穴を見つていくことも、颯爽と逃げ出してみせることも、そう難しくはないはずです。
今週のキーワード
脱・忠犬ハチ公