ふたご座
求愛と労働
もうすでに色褪せつつある幻想を離れて
今週のふたご座は、「あきらめて縫ふ夜の針はひかるなり」(藤木清子)という句のごとし。あるいは、新しい試みのための力を再び集めなおす決意をしていくような星回り。
連作「あるわかれ」からの一句。「あきらめて」とあるように、作者はひとつの恋を過去のものとしました。自分で断ち切ったのか、断ち切られたのかは定かではありませんが、少なくともギリギリの精神状態であったはずです。
掲句はその最中に、失恋と労働が結びついたことで、孤独感がいよいよ増している様子がありありと伝わってきます。
針に宿る光の鋭さは、その孤独を見つめる作者のまなざしの鋭さでもあるのでしょう。ただ、そうして孤独を徹底的に見つめた先にしか、新たな繋がりやそれに応じた新たな試みはあり得ないのです。
作者は、そうして生の酷薄なありようを焦点化するなかで労働を見出し、それを人生に織り込んでいきました。
そして、11月4日(月)にふたご座から数えて「意識の開け」を意味する9番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自らの前途を開くために必要な犠牲を払っていくことがテーマとなっていくでしょう。
生命力の解放
なぜ人は傷つくことがあってなお、誰かを愛そうとするのか。それは、生きていくモチベーションを自分ひとりだけで持ち続けるのは困難だから、という理由に尽きます。
そして労働というものもまた、自分以外の誰かがいて初めてその意味や価値を実感することができるという点で、求愛することとどこか似ているのかも知れません。
そう、ややこしいことはさておき、今週はこれからも生きていくために、いかに人を愛しうるか(愛されるかではなく)、ということが問われてくる時なのだとも言えます。
「われわれは生きて肉体のうちにあり、いきいきした実体からなるコスモス(大宇宙)の一部であるという歓びに陶酔すべきではないか。眼が私のからだの一部であるように、私もまた太陽の一部なのである。」(T・H・ロレンス『黙示録論』)
一般的には『チャタレー夫人の恋人』の作者として知られるロレンスがテーマにしたのは、近代社会の狭くせせこましい道徳の中でがんじがらめになった生命力を、偽善の拘束から解き放つことでした。
同様に、「いかに人を愛しうるか?」という今週のふたご座のテーマもまた、「いかに生命力を偽善の拘束から解き放ちうるか?」ということと表裏であるということを、今週はよくよく胸に刻んでいくといいでしょう。
今週のキーワード
自分は大いなるものの一部であるという感覚