ふたご座
電話接続端子な私
不在な「あなた」
今週のふたご座は、「熱い味噌汁をすすりあなたいない」(波止影夫)という句のごとし。あるいは、自身の霊感の源泉にアンテナを向けていくような星回り。
掲句は「作風と批判の自由」を標榜していた「京大俳句」に1938年に発表された、戦死した年上の従兄弟へ詠んだ連作のうちの一句。
手の中の熱い味噌汁が、今ここにあるみずからの生と「あなた」の不在とをまざまざと突きつけ、際立たせる。
なんとも痛切で、ストレートな言葉が心を打つが、この句はのちに、反戦思想だと言いがかりをつけられ、作者を含めた関係者は次々に特高に逮捕され、拷問すら行われた。いわゆる「京大俳句事件」である。
ことほど左様に、戦前の日本では戦争反対や厭戦気分につながるとされた表現でさえ厳しくチェックされ、表現の自由は圧殺されていき、それは言論・文化のあらゆる分野に及んだ。
ふたご座から数えて「困難の克服」や「悪習の禊ぎ」を意味する6番目のさそり座へと太陽が移行していく今週は、「自由な表現力」というふたご座の本分に改めて立ち返るためにも、そうしたかつてあった無惨な現実や今の社会でのぶり返しに目を光らせていきたいところ。
ビブリオマンシー、あるいは書物占い
いくらたくさんの知識を持ち、古今東西の歴史に通じていようとも、もしそこから今現在自分が対している状況についての適切な判断や言葉を引き出すことができないのなら、それは電話帳を持って無作為にパラパラめくっているのとそう変わらないだろう。
あるいは考えようによっては、分厚い電話帳のページを自らの意思で止め、そこから然るべきメッセージを、然るべき相手に、然るべきタイミングで伝えていくことができるかが問われているのが、今週のふたご座なのかも知れない。
どこに自分の「今」をつなげていくのか。そして、つながった先の相手の声に、何と応答するのか。
ふと目にしたニュースであれ、夜見た夢であれ、人からのアドバイスであれ、何を見聞きしたとしても、この世界はひとつの書物のようなもの。
すでにそんな書物を手に持っている以上、そこで今の自分に必要なものが示されたと感じたなら、迷わず判断を下し、行動に移してみること。きっと、それこそがあなたが探し求めていた答えに他ならないはずだ。
今週のキーワード
「もしもし、運命の人ですか。」(穂村弘)