ふたご座
うろうろの効能
「かなしい」は「愛しい」
今週のふたご座は「冬蜂の死にどころなく歩きけり」(村上鬼城)という句のごとし。あるいは、生物としての“かなしみ”に感じいることで、自らを愛おしんでいくような星回り。
冬を迎え、今にも死にそうなほど衰えていながらも、死なずに歩いている一匹の蜂。そんな弱く哀れな存在への作者のまなざしはどこか切実なものがある。
耳が聞こえず、貧しかった作者について知ってしまうと、「死にどころなく」など特にそこに自分自身の姿を託していたのでないかという印象が強まっていく。
ただ、そうした作者の事情と掲句とはいったん切り離した方がいいだろう。作者に限らず、この世を生きる者はすべからくちっぽけで、運命に翻弄され続ける悲しい存在なのであり、だからこそどうしようもなく愛しい。
そして、そうした普遍的な生命の悲しさというのは、どこかで「死にどころ」を意識するところまで行ってみないとなかなか実感できないものでもある。
あなたの死に場所や終着地点は、いったいどんなところなのか?
8日にさそり座で新月を迎える今週は、冬の蜂のごとき存在としての自分ということに改めて立ち返りつつ、自分に必要な「死に場所」を思い描いていくといいだろう。
有漏から無漏へ
明確な目的を持たずにあちこちをほっつき歩く「うろうろ」の「うろ」とは、本来「有漏」という字をあてる仏教用語なのだそう。
「漏」とは穢れや煩悩の意であり、悩み惑い、決断しかねて迷っていく中で、時に人は次なる目的地やそこへの道のりさえも忘れてしまう。これが「有漏」なのです。
ただし、それが行き尽くところまで行ききって、迷いがなくなるまでうろうろしきってしまうと、今度は反対に「無漏」となり、人は安心して死出の旅路に出ていける。
まだ「その時」がずっと先であるならば、まずは悩みが尽きるまで、ひたすらにうろつき回るだけの覚悟を決めていきましょう。
今週のキーワード
人生はあの世への散歩道