やぎ座
日常をただす
振る舞いとズレ
今週のやぎ座は、「小刀や鉛筆を削り梨を剥く」(正岡子規)という句のごとし。あるいは、日常を小さく刻む切れ味を、ますます研ぎ澄ましていくような星回り。
まだ鉛筆削り器がなかった時代は、誰もが小刀を持っていて授業前などにせっせと鉛筆を削っているのが当たり前の光景でした。
掲句は、そんな鉛筆を削っている小刀でそのまま梨を剥いたというだけのシンプルな句ですが、やはり読む人からすれば、「えっ、不衛生なんじゃないか」と引っかかるのではないか。おそらく、作者の子規はそのことをきちんと意識したうえで、この句を作ったのでしょう。
つまり、自分が何気なくやっている振る舞いも、他人から見れば奇異に映ることがある。そのズレに、どこかで感じ入ろうとしているのかもしれません。
こうした自分を冷徹なまでに突き放す感覚の鋭利さこそ、子規の最大の特徴と言えるでしょう。今週のあなたもまた、みずからの日常の小さなズレに焦点を当てることで、わが身をただしていくことがテーマとなっていくでしょう。
触覚の効用
私たちは日頃、見える部位や触れられる部分、鼻づまりや筋肉痛、むくみやむかつきなど、じつに断片的な知覚データをなんとかひとつにまとめて「自分の身体」としてまとめ上げています。
「振る舞いをただす」ということは、裏を返せばそうした知覚データを編集しなおしていくということでもあります。
あるいは、さまざまな風景や記憶を動作に変換していくことで、これまでとは異なる生き方や生活に導かれていくということがあるのです。
これは「触覚」を刺激することで脳の中の「橋脳(きょうのう)」と呼ばれる部分が刺激されるからとも考えられます。橋脳が活性化していくことで未来への展望も開けやすくなっていくのです。
そんなわけで、今週はぜひ触覚を刺激し、また刺激されている材料を見直していくところから、自分を見直していくことをおすすめします。
今週のやぎ座へのキーワード
橋脳