やぎ座
自分を浮き上がらせてくれるもの
「自分‟が”」ではなく
今週のやぎ座は、『春の浜大いなる輪が画いてある』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、想像を超えた縁にすすんで引っ張られていこうとするような星回り。
春の日差しをいっぱいに浴びた海を見ようと訪れた砂浜にて、ふと視線を落とすと誰かの残した輪を見つけた。
事実だけ抜け出せば、ただそれだけのことではありますが、掲句ではその「輪」を「大いなる」と形容することによって、事実以上の意味を掴みだすことに成功しています。
これがもし「大きな」であれば、単にそのサイズ感を表すだけですが、あえて「大いなる」と詠うことで、りっぱで、雄大で、こちらの想像を超えた何かへと変化させているのです。
それはちっぽけな自分“に”たまたま与えられた地上の星座であり、原因と結果の法則という予測可能性の鎖でははかることのできない、縁で結ばれた関わりというものの不思議さという風にも言えるかも知れません。
しかし「縁で結ばれた関わりが」と言ってしまったら、やっぱり大事なものが損なわれてしまう訳です。その意味で、4月24日にやぎ座から数えて「メンバーシップ」を意味する11番目のさそり座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ただ「大いなる輪が」とうそぶいていくべし。
「浮力」の発見
しかし、事実を詩的に詠ってみせるということは、改めてどういうことなのか(日常的言語と詩的言語の違い)。例えば、水の中に入れば誰もが「浮力」を容易に感じることが出来ますが、それを陸上にいながらにして感じることができたとしたら?
水の中に入って浮力を感じたのならごく当たり前のことですが、そうでないところで「浮力」を見出したのなら、それはまさに掲句の作者がおこなってみせたような、詩人の営みに他ならないでしょう。
頑張れば頑張るほど水流に逆らって歩いた時のような重たさや不自由さが増していくこの世界において、一時的にしろ「浮力」の助けを借りられた時、人は新たな夢を膨らませる。
本当はあそこに行ってみたかった、あの人と会って、こんな話をしてみたかった…。
どんなことでもいい、今週のやぎ座は、そうした「浮力」とつながりつつ、ささやかな夢を解放していくことがテーマであり、その中で、自分の想像力がどれくらいすこやかなものであるかも同時に問われていくことでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
縁の不思議さ