やぎ座
オルタナティブな像を結びなおす
つるりとした表面に爪を立てる
今週のやぎ座は、あまりに露骨なメッセージにまつわるモヤモヤの回収期間。あるいは、どこかに必ず待ち受けているだろう待ち伏せに備えていこうとするような星回り。
いつだって現実というのはいびつで、でこぼこしていて、そんなに綺麗に語り切れないものですが、実際には「SDGs」という言葉のように、そうした実態を悪い意味で覆い隠されているような違和感を覚えることも多いはず。例えば、かつて村上春樹が行ったオウム真理教の元信者へのインタビューがそうでした。
彼らはいずれの自分の正しさの担保のために人がうなずいてくれることは必要としていても、他人から「それおかしんじゃない?」と言われることは何も欲していませんでした。むしろ、おかしいんじゃないと言われたら、自分がおかしくないことを証明しようとする。
そんな彼らの話を聞き続けた後、村上は次のように述べました。
現実というのは、もともとが混乱や矛盾を含んで成立しているものであるのだし、混乱や矛盾を排除してしまえば、それはもはや現実ではないのです。(中略)そして一見整合的に見える言葉や論理に従って、うまく現実の一部を排除できたと思っても、その排除された現実は、必ずどこかで待ち伏せしてあなたに復讐することでしょう。(『約束された場所で』)
11月27日にやぎ座から数えて「手探り」を意味する6番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした排除された現実を、安易な手段でごまかすことなく、手探りしていきたいところです。
現象としての“妖怪”
たとえば夜、川や谷で「シャリシャリシャリ」という、あずきを洗うような音がする。それは小豆とぎという妖怪が音を出しているのだ。そんな伝承が、かつては日本各地に残っていたそうです。
今どき妖怪なんて言えば、無知や妄信のレッテルを真っ先に貼られてしまいそうですが、しかし水木しげるや彼のよき理解者たちが口々に言っているように、そもそも妖怪というのは近代的知性によって「解明」され「克服」されるべき対象などではなく、ただ「感じる」ものなのです。
先の「小豆とぎ」という妖怪の存在にしても、濃い闇の感覚、水の流れる音や虫の声とは別に聞こえてくるかすかな物音、確かにそこに何か動いているものがいる気配、といった否定しようがない身体体験への感じ取りが前景化していった時に、ひとつの現象として仮の名称を与えられたものだと考えれば合点がいくのではないでしょうか。
今週のやぎ座においても、そうした目に見えない、音や気や、不可解な「感じ」としか言いようがないものこそが、これまで見えていなかったもう一つのリアリティーを作り出すきっかけとなっていくはずです。
やぎ座の今週のキーワード
シャリシャリシャリ…