やぎ座
生産性/効率性の罠にはまらないために
スマート社会への潮流のなかで
今週のやぎ座は、不揃いの道具を手にDIYを楽しむ日曜大工人のよう。あるいは、まずは自分と仲良くしていくための時間を大切にしていくような星回り。
哲学者の戸谷洋志は『スマートな悪ー技術と暴力についてー』において、ナチスを例に挙げ当時ユダヤ人の虐殺に加担した人びとはまともな良心を持たない人でなしだったのではなく、「まるでスマートフォンのシステムが自動的にアップデートされるように、良心を自動的に更新されてしまった」のだと指摘した上で、「最適化を至上の原理とする社会」へと向かいつつある現代社会はそうした「悪の陳腐さ」が拡大・再生産がますます強化されていく流れにあるのだと警告しています。
そのとき人間は、積極的かつ自発的にシステムの「歯車」になろうとする。自分をシステムが要求するもっとも望ましい歯車へと最適化しようとするのである。
とはいえ、現実的にはテクノロジーの発展のいっさいを唐突に止めることはできませんから、どこでテクノロジーと人間との関わりを線引きしてしていくかということが焦点になってくるはず。戸谷はそこで20世紀の思想家イヴァン・イリイチの「自立共生社会」という構想を参考に、「人びとがそれぞれのライフスタイルに合った道具を使い、自分の道具を自由にカスタマイズ」することこそが、超スマート社会において人間が複雑な産業システムの歯車にならないための鍵になるのではないかとも述べています。
6月18日にやぎ座から数えて「生産性」を意味する6番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が日々をどう過ごしていくと心地いいのかをよく知っていくことから改めて取り組んでみるといいでしょう。
「大きな子どもたち」からの卒業
童話の世界では、アラジンが魔法のランプをこすって突然大金持ちになったり、宮殿やたくさんの宝石が魔法の杖の一振りで現われたりします。こうした子どもじみた、大げさな教えを大人になっても真に受けているような人間なんて、普通ならいるはずがないと考える訳ですが、実際にはそうではありません。
私たちの世界では狩りであれ耕作であれ建設であれ、事物との絶えざる戦いを通じて初めて何らかの豊かさを得るができるのだとよく認識している歴戦の大人たちよりも、かわいらしい言葉をかければ自分が望む贈り物を受けとることができるのだと、どこかで信じ込んでいる「大きな子どこたち」の方がずっと優勢なのです。
ある意味で人間の諸悪の根源は、テクノロジーの進歩とは対照的なこうしたある種の「無邪気さ」にあるのだと言えますが、自然はいつも人間が油断したところに襲いかかってくるものであり、「好意の期待」などという幼稚なふるまいは本質的には一切通用しない相手であるということを、私たち現代人はどこかで忘れてしまっているのかも知れません。
その点、今週のやぎ座なら、ただ微笑み、受けとり、お礼を言うだけですべては済むと思い込む代わりに、不揃いの道具―例えばツルハシを手にとって、果敢に自然(現に感じている生きづらさ)に挑みかかっていかんとする方を、改めて選択していけるはず。
やぎ座の今週のキーワード
きちんと戦い続けるということ