やぎ座
準備と祈り
地に足をつけろ
今週のやぎ座は、サンダルを脱いだモーセのごとし。あるいは、つとめを果たすのに必要な準備を整えていこうとするような星回り。
エジプトで殺人を犯したモーセは、エジプト王の追求を逃れるため遠い異郷の地に身を隠し、その土地の祭司の娘と所帯をもち、羊飼いとして働く日々を送るうち、なんと40年もの月日が経っていました。しかしある時、荒野の奥で芝が燃えているのに気づき、近づいてみると、芝の中から声が聞こえてきたのだと言います。
神は芝の中から彼を呼んで、「モーセよ、モーセよ」と言われた。彼は「ここにいます」と言った。神は言われた、「ここに近づいてはいけない。足からくつを脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は聖なる地だからである。」(出エジプト記3章4-5)
ここでいう「くつ」とは、羊飼いが砂漠ではく革製のサンダルのことで、サンダルは自由人のしるしであり、名誉と誇りでもありました(奴隷や貧乏人は裸足で歩いていた)。言うなれば一人前の大人の証しであり、かりにもエジプト王女の養子であったモーセにとって、この命令を実行するのはかなり抵抗があったはずです。
つまり、「くつを脱げ」とは「自分の過去を捨てよ」という指示であり、お尋ね者となってかなりの時間が経過しても、未だにかつての華やかな暮らしや身分が忘れられず、どっちつかずの不安定な精神を抱えた中途半端さから脱却して、地に足をつけろ。そうしてこそ、奴隷たち(エジプト王の下にいるヘブライ人)の指導者となりエジプト脱出の仕掛人がつとまるのだ、と。
9月26日にやぎ座から数えて「つとめ」を意味する10番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、「くつを脱いで裸足になる」ということを自分なりに実践していくことがテーマになっていくでしょう。
‟神のみこころ”に即す
内面に沈黙をつくりだし、いっさいの欲望、いっさいの意見に口をつぐませ、愛をこめ、たましいのすべてをあげ、言葉にはださずに、「みこころの行われますように」と思いをつくすとき、次にこれこそどうしてもしなければならぬことだと、あやふやさの一点もなく感じられることがあったら、(もしかすると、ある点では、これも思い違いかもしれないのだが……)それこそ、神のみこころである。(『重力と恩寵』、シモーヌ・ヴェイユ、田辺保訳)
人間はおそらく神のみこころそのものを知ることはできませんが、祈りやそれに類する習慣を通じて、個別的な事柄や思惑を頭の中から祓っていくことはできるはず。少なくとも、どんな言動、あるいは決断を選択していくべきかをはっきりさせていくことはできる。じっと目をこらして、観察し、自分に問いかけることを怠らなければ。
そうした「当たり前のことを真面目に問い、応える」ということが、あらためて今週のやぎ座にとって1つの指針となっていくはずです。
やぎ座の今週のキーワード
内なる神への奉仕