やぎ座
統べるということ
邪魔をしないで引き立てる
今週のやぎ座は、『一村にひとつの夕日天道虫』(土屋未知)という句のごとし。あるいは、自身の存在感を増大させる代わりにさりげなく馴染ませていこうとするような星回り。
夏の季語である「天道虫(てんとうむし)」の「天道」とは太陽のことで、名前の由来は、木の枝などにとまると、先の方まで登っていって、太陽に向かって飛び立つからだとも、日なたを好むからだとも言われています。
掲句では、ある夏の夕暮れに、視界の端に落ちていく夕日へ向かって、まるでその視界におさまる「一村」を統べる王であるかのように「天道虫」が悠然と飛んでいった光景が捉えられている訳です。
ただし、統べる王とは言っても、それは実際的な因果関係で太陽を動かしている訳でもなければ、その強烈な存在感で村人たちを圧倒している訳でもなく、1枚の絵画のごとく縁どられた目の前の美しい世界をさりげなく引き立てているだけで、けっして同じ枠のなかにおさまった他の存在を邪魔していないのです。
こうして一緒に並ぶとなぜか絵になって見る人の心を動かしてしまう存在というのは、人間に置き換えてみると、いかに貴重でありがたいかということが身に沁みてくるのではないでしょうか。
その意味で、30日にやぎ座から数えて「調整」を意味する6番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自身が実現したい世界へといかに自分を調和させていけるかが問われていくでしょう。
祈りと願いの配分
あなたが居酒屋のアルバイトであれ、会社の経営者であれ、この世界を左右するその影響の計り知れなさという点では、本来そこに大した差はありません。
そうした肩書き以前に、ひとつの生命体として大事になってくるのは、さながら登りうる1番高い所から太陽に向かって飛ぶ天道虫のように、一日いちにち積み重ねていく行為のどこまでが「祈り」であるかどうかということ。
この場合の祈りとは、単なる「望み」とは決定的に異なり、家族の平穏であれ、日が昇ることであれ、そうした事態に自分も加わって、その責任の一端を引き受けたいという意志の現れでなければなりません。
つまり、自分にとって大切だと思えるものが明確でなければ、自然と祈りから人は遠ざかっていきますし、ましてやあれもこれもと手を伸ばし過ぎて、本当のところで何が大切なのか分からなくなってしまえば、跡形もなく祈りは生活から消え失せてしまうのです。
言い方を変えれば、今週のやぎ座は自分の生活にどこまで祈りが浸透しているのかを冷静に見定めていく期間なのだとも言えるかも知れません。
やぎ座の今週のキーワード
祈りと生活の調和