やぎ座
“どこ吹く風”の発動
いい意味で適当に
今週のやぎ座は、『きのふとは一日限り鳥雲に』(片山由美子)という句のごとし。あるいは、長く続いた足踏み状態に終止符を打っていくような星回り。
「鳥雲に」という季語は、冬のあいだ日本に来ていた渡り鳥が春になってふたたび遠くに旅立っていき、雲間に見えなくなることを表しています。
昨日という日は決して後戻りできない1日であり、それはかけがえのないものですが、私たちはしばしば過去の亡霊に思考をジャックされ、終わったはずの出来事に囚われながら今日という日を生きようとするところがあります。
しかし、冬鳥と人間の関係が春の訪れとともにおのずと解消され、この地上のものではなくなるように、作者は「きのふとは一日限り」なのだと改めて痛感したのでしょう。
その意味で掲句ができたタイミングは、作者にとって過去に囚われて生きることの不自然さや、無理強いがそう長くは続かないこと、そうせざるを得ない自分自身の弱さやちっぽけさを、やっと受け入れることができた瞬間だったのかも知れません。
17日にやぎ座から数えて「ひとつの到達点」を意味する10番目のてんびん座で満月を迎えたところから始まっていく今週のあなたもまた、冬鳥のように飛び立った「きのふ」=過去とのつかず離れずのいい距離感を探っていきたいところです。
おのずから運ばれていく
鳥が羽を任せる風は決まった行き先を持たず、あてどなく吹いていくものです。さらに踏み込んで言えば、風はどこに向かって吹こうかなどと思い悩むこともありません。
人生がもし風だとしたら、そこには予測可能性をいうものがなくなります。さながら、風に舞う花びらを受け止めようとして追いかけても、つかまえることはできないように。
風を知り、風を読むとは、風の方向を知ることではありますが、渡り鳥が磁気を感覚することで方向を決めるように、眼の前で生起するひとつひとつの事実にこだわっていれば、いたずらに風に飛ばされ続けるだけでしょう。
風を知るとは、風を感じるということであり、風とひとつになって、重力から自由になり、おのずから運ばれていくということに他なりません。
その意味で、今週のやぎ座もまた、ひと吹きの春風にのったつもりで過ごすことで、みずからが運ばれていく方向を大局的に感じ取っていくことができるかも知れません。
やぎ座の今週のキーワード
大いなる循環に参画する