やぎ座
じっくりと形にするべきもの
内なる憧れの結晶化
今週のやぎ座は、「あをあをと年越す北のうしほかな」(飯田龍太)という句のごとし。あるいは、あやふやな思いを明確な形へと置き換えていくような星回り。
青々として、年を越している、北方の潮流であることよ、というのが句の大意。そうすると、「あをあをと」も「年越す」も「北の」も厳密にはすべて「うしほ」を修飾していて潮流の描写のはずなのですが、「あをあをと年越す」と読んだところで、年が改まろうとしている厳かな空気がただよう濃紺の夜空がイメージされてきます。
ただ、そこから「北のうしほかな」という結びまで一気に読み下ろすとき、そうした天上の景色が海上の景色と交錯して、そこに風に煽られ飛ぶ激しい波しぶきが生じるのです。
しかし作者は親子代々、山に囲まれた甲斐の国の奥地に住み続けてきた人ですから、掲句は実際に見た景色というより、決して直接は見ることのできない海への憧れを結晶化したものと言えます。
翻って、今のあなたにも実際に経験してみたいと思い描いてやまない憧れの景色やシチュエーションはあるでしょうか。12月29日に拡大と発展の星である木星が、やぎ座から数えて「言語の獲得」を意味する3番目のうお座へと移っていく今週は、作者のように曖昧な憧れを明確な形にしていくのにもってこいのタイミングとなるはず。
イエィツの流儀
アイルランド文芸復興の担い手で、ノーベル文学賞受賞作家でもあるW.B.イエィツは、2つの意味で規則的に仕事をすることを大切にしていたと言います。
ひとつは、集中力がなくなってしまうから。いわく、「少しでも変わったことがあると、私の決して堅固とはいえない仕事の習慣はくずれてしまう」と。そして、2つ目の理由が彼がカタツムリのように物凄くゆっくりとしたペースでしか仕事ができなかったから。
彼の書いた手紙によると、「私は書くのがとても遅い。満足のいくものは、一日にせいぜい五、六行で、それ以上書けたためしがないし、八十行以上の叙情詩を書くのは数カ月かかってしまう」そうですが、詩以外の収入を得るために書いていた批評文などに関してはその限りではなかったようで、「人は生きるためにおのれの一部を悪魔に与えなければならない(中略)私は批評文を与える」とまで書いています。
イエィツが仕事、すなわち「結晶化」の仕方において優れていたのは、まさにこの区別にあり、これと決めた核心的な仕事だけに自分なりの流儀を厳しく適用していったのです。
その意味で今週のやぎ座また、結晶化に際してどのような自分なりの流儀を持っており、またそれをいかにアップデートできるのか、ということが改めて問われていくでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
カタツムリのごとき