やぎ座
かがみよかがみ
啓蒙主義の正体
今週のやぎ座は、思想警察から逃走し続けたルソーのごとし。あるいは、何が本当の意味での「啓蒙」なのか、「進歩的」であるとはどういうことなのかを問い直していくような星回り。
ジョージ・オーウェルの小説『一九八四』には、思想犯罪を取り締まる思想警察が出てきますが、これはフィクションであると同時に極めて歴史にひもづいたリアリティのある話と言えます。
例えば、17世紀後半から18世紀にかけてヨーロッパでおこった啓蒙主義では、キリスト教は迷信として攻撃された訳ですが、これは中世初期にカトリック教会が西欧各地に根付いていた土着的な信仰や風習を迷信として撲滅しようとしたことにそっくりです。
どちらも「正しい思考様式」を定め、それから外れる思想を異端や迷信として排除し禁圧しようとした訳ですが、こうした身体や財産ではなく思想を冷酷に改変し、支配しようとする権力はいつの時代にも存在してきました。そして、啓蒙主義者たちの人間は理性的存在として完成されうるという議論は、一見すると進歩的で理知的なものに見えますが、じつは人間は教育によっていくらでも改造できるという『人間機械論』のような思想とセットでした。
18世紀フランスの思想家ルソーはよく啓蒙主義者と勘違いされがちですが、彼はむしろパリの啓蒙主義者たちという思想警察によって監視され迫害された、真の意味で気付いていた人だったのです。
10月6日にいて座から数えて「平凡さへのハマり込み」を意味する10番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、いま自身が抱いている思想がどこに由来するものなのか、改めて確認してみるといいでしょう。
「まさか」や「もしも」の正体
もしあなたが自らの存在価値と、思い定めている方向性を少しでも信じているのなら、いまは前へ前へと進んでいくことよりも、立ち止まって心のどこかで引っかかっている気がかりや胸のつかえと、きちんと向き合ってみることの方が大事かも知れません。
「まさか」の瞬間はいつやってくるか予想がつきませんし、自分だけは例外だと考えて「もしも」の時への備えを怠る者は、肝心なところで運命にいたずらされ、裁きの俎上にのせられてしまうものです。
この先も心の奥底で暗い不安をずっと膨らませていくくらいなら、いっそここらで思い切って「まさか」や「もしも」の正体を突き止め、不要な不安を消し去っておくのも悪くない選択でしょう。
今週のやぎ座もまた、自分の頭や心のなかの考えや感情が、みずから抱いたものなのか、いつの間にか抱かされていたものなのか、腑分けしていくつもりで過ごしてみるべし。
やぎ座今週のキーワード
「正しい思考様式」の“正しさ”を疑うこと