やぎ座
選ばれるんじゃなくて、選ぶんだよ。
価値の再選択
今週のやぎ座は、鈴木秀子さんに訪れた転機のごとし。あるいは、自分を包んでいる何か大いなるものに身を委ねてお任せするような星回り。
名門ブルーノート・ニューヨークに、日本人ヴォーカリストとして初めて出演したヴォーカリストの鈴木重子さんが、インタビューの中で面白いことを言っていました。彼女は東大卒の秀才としても知られ、少女時代は勉強に明け暮れる日々だったのだそうです。
私は毎日、明日のために生きていた。明日の試験のために勉強する。明日の何かのためにこれをやる。でも先生たちは、いま音楽をやっているのが幸せと言っておられた。その違いって大きい。こんなに充実して、こんなに生き生きしている人がいるとは思ってもみなかった。それまで私は、今日やりたいことをやって、明日どうするんだろうって思ってたんですよ。「今日やりたいことをやるとハッピーだから、明日もやりたいことができる」っていう循環について考えたことがなかったんですね。それを気付かせてくれたのがこの二人だった(「weekendインタビュー―MSNピープル」)
彼女はこうして「今後の抱負を考えるより、その日のこと、今この瞬間のことを大事にする生き方」を体得したそうですが、これはアリとキリギリスの寓話のキリギリスのようなその日暮らし的な刹那主義と一見すると似ていますが、実際にはまったく異なります。
22日夜にやぎ座から数えて「現在の愉悦」を意味する2番目のみずがめ座で迎える満月から始まっていく今週のあなたもまた、この瞬間、瞬間を大切に生きていくなかで、自然に自分のところにやってくるものを受け止めていくべし。
またひとつ正しさの強制から自由になっていくこと
中島梓の『コミュニケーション不完全症候群』では、ダイエット依存症の女の子だとか、オタクや腐女子など、現代社会に特有の少年少女における一群の現象を、現代社会へ過剰適応という観点から読み解き、若い女の子が過剰なダイエットに駆り立てられるのは、社会が求める‟いい子”像から自分が外れないためだ、と断じます。
真面目で従順だからこそ、彼女たちは社会からのメッセージ、命令に過度に忠実にしたがう。そうして自分自身を破壊しようとすることによってだけ、彼女たちは社会に無力な復讐をとげているのである。(中略)ダイエットが女性たちに約束している手形はこうである―あなたももし、この社会で「いい子」のメンバーでいたい、社会から可愛がられる優等生でいたいのならば、私のいうことをきいて、私の価値を信じる事だ。体重は軽ければ軽いほど偉いのだ。
私たちは、いつだって誰かに選ばれたいし、愛されたい。そうじゃない自分なんて、許せる訳がない。そんなふうに思うことを、いつかやめられる日が来るのでしょうか。もしかしたら、いつまで経ってもそんな日は来ないかも知れません。けれど、少なくともこの本のように、自分の病いを自覚することならできるはず。
今週のやぎ座もまた、しばしば硬直化しがちな‟価値”が、自分で想っているよりもっと多様で相対的なものものであることに気付いていきやすいタイミングを迎えているのだと言えるでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
脱・自己催眠