やぎ座
危惧と修繕
こちらは8月9日週の占いです。8月16日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
内なる攻撃性や無感覚への自覚
今週のやぎ座は、多くの人との共通言語としての「メディア」のごとし。あるいは、ハートからハートへの対話か、人を小馬鹿にしたような無関心かのどちらかに振れていくような星回り。
作家の村上春樹は、2020年7月10日に毎日新聞で配信されたインタビューの中で、次のような危惧について口にしました。
「特にこういう一種の危機的状況にある場合には、例えば関東大震災の時の朝鮮人虐殺のように、人々が変な方向に動いていく可能性があるわけです。そういうのを落ち着かせていくというのはメディアの責任だと僕は思うし。」
今年2月に、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長が女性蔑視発言をめぐって辞任した例に限らず、世間にはびこっている構造的な差別や、世代から世代へと連綿と受け継がれる負の連鎖というのは、あるきっかけを得ればすぐに狂暴化します。
私たちはいつだってそういう世界の文脈の中にいるのであって、そうしたいつ起きるとも知れない狂暴化を抑制するのは、村上春樹が警告するように「メディアの責任」であると同時に、読者ひとりひとりが、自分のなかにある攻撃性や無感覚とどれだけ向き合っていけるかにかかっているのだと言えます。
やぎ座から数えて「盲点」を意味する8番目のしし座で8月8月夜に新月が形成されたところから始まる今週のあなたもまた、自分の中にある暗い側面の自覚をいかに行動や実践へと繋いでいけるかが問われていくでしょう。
井の中の蛙空の深さを知る
どこから見ても完璧で、見事な調和=美しさを体現した人間などこの世にはいませんが、それでも多くの人はそうであることを価値と見なし、何らかの欠損や不格好、あるいは傷跡をできるだけ人の目から隠して、なかったことにしようとします。それが愛されるための唯一のやり方であるかのように。
しかし、私たちが何か大事なことに気がつく契機や機会というのは、大抵は小さなすき間や亀裂のように狭く短いものであり、そういうフラジャイルな情報を遮断しないでいることによって、いい加減でない存在としてそれまでとは別種の美しさを手に入れていけるのだということを忘れてはいけないように思います。村上が言っていた「人が変な方向に動いていく可能性を落ち着かせていく」とはそういうことでもあったのではないでしょうか。
その意味で今週のやぎ座は、「完璧さ」や「調和」への強化や成長という仕方とは別のスタイルで、この世界に回帰してこれるような着地点を模索していくことがテーマとなっているのだとも言えそうです。
やぎ座の今週のキーワード
金継ぎの美