やぎ座
日常を掘り下げる
こちらは4月12日週の占いです。4月19日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
記憶の光景
今週のやぎ座は、「あたたかな橋の向うは咲く林」(宮本佳世乃)という句のごとし。あるいは、ふとした瞬間に行くべき場所や話すべき相手に引き寄せられていくような星回り。
どこか夢の中の情景のような一句。「咲く林」とあるのは、フタリシズカでしょうか。大きな緑の葉の上に小さな白い穂状の花を2本出して咲くことからそう名付けられたこの花は、雑木林の一角などに群生し4月から初夏にかけて咲いていきます。
明るく降り注ぐ春の日差しとは対照的な山林の暗がりで、寄り添いあうように密集して咲くフタリシズカは、どことなく密やかな趣きがあり、まるで内緒話をしているようでもあります。
そこはあきらかに人間の世界ではないにも関わらず、橋をこえれば簡単に行ける場所でもあります。ただし、その橋が「あたたか」でなければ、林は咲いていないのであって、おそらくそれ以外の時期に橋を渡っても歓迎はされないのではないでしょうか。
すなわち、句に詠まれた橋の向うの咲く林とは、この時期、このタイミングでしか行くことのできない場所であり、そこでしか交わせない会話がある。どうも掲句には、そんなことをつい連想させられるノスタルジーを秘めているように感じます。
12日にやぎ座から数えて「心の奥底」を意味する4番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、不思議と思い出される場所や相手がいたなら迷わずそちらへ渡ってみるといいでしょう。
才能から素朴へ
文芸の世界であれ、芸能界であれ、どんなジャンルであっても、一瞬の輝きを放った後に表舞台から消えてしまう‟才能ある新人”という存在は、いつの時代も後を絶ちません。
それは他の誰もやったことのないような、ユニークな試みというのが、ギリギリまで追い詰められた個人から発されたケースであり、これはある意味で、いまのやぎ座が目指している方向性とは真逆のものと言えるでしょう。
例えば、山梨の山中に暮らし俳句を作り続けた飯田蛇笏や、地元の秩父を愛した俳人の金子兜太のように、自分に合った土地とつながり、その土地の力を直接を受けて原動力にできた人というのはやはり理屈を超えた強さがありますし、小手先の方法論に頼る他ない人間と比べて、活動の息も太く長いものになっていくのです。
「他にはない華がある」「才能がある」「光っている」など、そうした誉め言葉に自分を重ねていこうとするのはもうやめましょう。
今週のやぎ座は、たとえどんなに素朴でささやかなものであっても、自分の日常を掘り下げていくことの大切さが、身に沁みてわかっていくタイミングなのではないかと思います。
今週のキーワード
普通に生きるのが一番難しい