やぎ座
250年くらい生きるつもりで過ごしてみよう
この世界の片隅で
今週のやぎ座は、「蕗の薹見付けし今日はこれでよし」(細見綾子)という句のごとし。あるいは、みずからの心境や気持ちの変化にゆっくりと気付いていくような星回り。
浅みどり色の玉のような「蕗の薹(ふきのとう)」は春を告げる風物の一つで、天ぷらにすると独特の苦みが舌をうちます。これは蕗の花の芽の部分で、地上に現れたところを摘んで料理に使うのです。
掲句は庭の片隅でそんな蕗の薹を見つけて、きっと春そのものをつかまえたような気分になって心ひそかに満足しているところなのでしょう。
地味な情景ではありますが、ラットレースのようにつねに慌ただしく次の予定やタスクに追われ続けている現代人にとって、そう遠くない未来の兆しを一つ見つけただけで「今日はこれでよし」とする作者の潔さにハッとさせられるものがあるはず。
これは逆に言えば、日常のなかに何らかの兆しや符牒を見付けるということを、ひと昔前の人たちは現代人が想像する以上に重く受け止め、とても大切な営みと見なしてきたということでもあるのではないでしょうか。
20日に太陽がやぎ座から数えて「安心すること」を意味する4番目のおひつじ座に移動し、春分を迎えていく今週のあなたもまた、行動を急ぐ代わりに心に差し込むちょっとした兆しをじっくりと味わっていきたいところです。
受容のための技術
この世の喧噪や、欲望のもつれをさんざん経験した後、それに嫌気が差して軽蔑的に振る舞ってしまう人はたくさんいますが、今週のやぎ座はそうした俗世間や自らの過去の体験に対して、どこか霊的に豊かな意味合いを見出していくことができるはず。
それもこれも、そうした過去の環境とは対照的な、静謐さや穏やかさを自分の手で作り出していく術を身をもって覚えてきたおかげでしょう。
家事や事務仕事など、こまごまとした雑務を丁寧にこなしたり、自分で決めたスケジュール通りにきちんと生活していくことの効力は、どうにもならないことばかりのこの世界で、多少なりとも自分でどうにかできる領域があるんだと実感し、浮世を自在に漂う小舟のような「ささやかな自分の居場所」を見つけていく中で真価を発揮します。
あるいは今週は、そうした「自由」ということにまつわる矛盾をあらためて実感していく時なのだと言えるかも知れません。
今週のキーワード
西の善き魔女