やぎ座
隠遁入門
夢に誘われて
今週のやぎ座は、雁列から離れる一羽の雁のごとし。すなわち、社会離脱ないし人間離脱を何らかの仕方で試みていくような星回り。
人間はひとりでは生きていけない未熟で弱い個体として生まれてくるという特性から、社会的動物として半ば群れとして生きることを運命づけられた存在と言えますが、そんな中、時おり個が抑圧された自己を取り返そうとして、群れから離脱しようとする現象が起きます。
それは単なる気まぐれや病気のためばかりという訳ではなく、ふと個のうちに宿り、あるいは噴出した大いなる夢や抑えきれない悲しみに目をくらまされたのかも知れません。
その向こう側に待ち受けているであろう無限の苦難を忘れさせるだけの魅力を放つ離列という行為のことを、日本でも「隠遁」として尊ぶ文化を特に中世以降育んできました。
13日に自分自身の星座であるやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな隠遁者の系譜に連なるように、みずからの離列を模索していくことがテーマとなっていくでしょう。
ステップを踏んでいく
感性だけが雪崩のように先行し、あるいはひたすら行動あるのみで、いちいちなぜそうしたのかを誰かに分かりやすく説明する必要などない、と。特に若い頃などはそう思いがちかも知れません。
というのも、後から振り返ってみたときに、ああしておいて本当によかったなと思えることというのは、大抵できそうもないと言われたことを何も考えずやってみた時とか、みんなに呆れられ物知り顔で説教されつつも好きなことをやり通してみた時だったりするから。
つまり、言葉や理性に絡めとられる前に、身体ごと前のめりで行動できた時なのです。これが、先の言葉で言うところの「離列」に当たる訳です。
ただし、長く生きたり、やってみたいことのスケールが大きくなるにつれ、ただそうした前のめり行動の1本やりでは貫き通せない壁というものが必ず出てきます。
自分がしてきた行動を言葉にしたり、それを反芻していく中で、ハッとするものが必ずある。そういう豊かさに気付いたとき、人としてひとつ洗練されていく。いわば、これこそが万有の寂寥の美に開かれていく「隠遁」ということの第一歩なのかも知れません。
そんなステップを、今週のやぎ座はきっと踏んでいくことができるだろうと、そんな風に感じました。
今週のキーワード
隠者とは群れをひとり離れた孤独な雁である