やぎ座
足を止めてはいけない
遊歩者の心得
今週のやぎ座は、ルソーの『孤独な散歩者の夢想』の中の一節のごとし。あるいは、好きにさまよい人に語りかける遊歩者としての歩みを力強く前へと進めていくような星回り。
フランス革命を大きく後押しした政治哲学者で、人間の理想的な状態は文明や社会の中にではなく、自然の中にこそあると説いたジャン=ジャック・ルソーは、先に挙げた著書の中で次のように書いていました。
「わたしが集中できるのは歩いている時だけだ。立ち止まると考えは止まる。わたしは精神の足がともなう時だけ働くようだ」
おおっぴらに外出したり街を歩くことさえしづらくなっている昨今の状況を鑑みれば、こうしたルソーの言葉は、多くの都市生活者に対して警鐘を鳴らすものとして響いてくるのではないでしょうか。
好きなところを歩き回る自由を奪われることは、自分の頭で考える自由を喪失することに他ならず、よくよく自身の言動を振り返ることのできる人であれば、私たちは知らず知らずのうちにみずから両者の自由を放棄してしまうことすらあることを知っているはず。
22日にやぎ座から数えて「精神の自由」を意味する3番目のうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、少なくとも自分だけは周りの人間の自由を奪ったり制限したりするのではなく、むしろその逆の言動をしていけるよう心掛けていきたいところです。
歩行と探検のはざま
私たちはまがりなりにも毎日自分の面倒を見ながら生き続けていこうとしているはずですが、それは何のためかと言われれば、おそらくまだ自分の知らないことを見たり聞いたり体験していくことで、自分の欲求を満たしていくためでしょう。
つまり、ふだん自分が営んでいる生活システムの維持それ自体が目的なのではなくて、そうしたシステムを拡張したり、質を上げたり、別のシステムへと移行していったり、その中で何かを産み出したりしようとしているのです。
そしてそのためには、何らかの形で普段の生活システムの外へと飛び出してまなざしを反転させ、「外」からその限界だったり不足だったりを明らかにしていく必要があります。
そういう意味では、なにも南極大陸やエベレストまで行かなくたって、そうしたまなざしの反転そのものが広義の<探検>であり、旅行や芸術鑑賞と同じかそれ以上のインパクトをもたらしてくれるのではないかと思います。
例えば、「家」というシステムの外へ出て、ふだん通勤の際に脇を通り過ぎるか、せいぜいベンチに腰かける程度の近所の公園に、ビニールシートを敷いて寝転んでみる。それだけでも見えてくる風景はまったく違ってくるでしょう。
今週のキーワード
精神は足がともなう時だけ働く