やぎ座
面白く、する
面白いとは何か
今週のやぎ座は、世阿弥の「面白しと見るは、花なるべし」という言葉のごとし。あるいは、心凄くすさまじくあることを面白がっていくような星回り。
「面白し」という言葉は世阿弥にとってもっとも大切なキーワードの一つだったようで、能では観客に与える感動のことを「花」と喩え、能の優劣とはその舞台が「面白い」か「面白くない」かということで決まるのだと述べました。
ただ、それは単に観客にウケようと媚びよということではなく、もともと「面白し」という言葉がいったんは天岩戸に姿を隠した天照大御神に再びまみえることのできた神々の光あふれる表情に使われていたように、この世の根底で働いている大いなるいのちの働きに触れた深い感慨を指していました。
例えば、能の台本である謡曲の詞章には、「面白やなれても須磨の夕まぐれ、(中略)空すさましき月影の」(「松風」)とか、「都の人といひ狂人といひ、面白う狂うて見せ候へ」(「隅田川」)といった、現代的な文脈ではまず「面白い」とは結びつかない「ぞっとする」「狂う」といった言葉と一緒に使われていましたが、それもまた深い感慨を促進させる上で大切なものと感じられていたのでしょう。
9月22日のやぎ座から「公的な開示」を意味する10番目のてんびん座へと太陽が移っていく今週のあなたもまた、どうせ見てもらうなら「面白く」していこうという工夫や機転を大いにきかせていくことがテーマとなっていきそうです。
異界を作りだすということ
最近はあらゆることがマーケティングで考えられるようになりました。売るためのわかりやすさや役立つことが求められ、提供する側も本音を言わずポジション・トークに徹していく。そして若い学生までもが、同じようなことを就活などでやっていくうちに、「大人は誰も分かってくれない」なんて愚痴をこぼしたりしている。
どうも時代がキナ臭い方へ向かいつつあるように感じますが、能でも物語でも教育現場でも、魂ということを対象に置くなら、そこではまず「ここではない異界」を作りだすことを考えなければいけないと思います。
たとえば謎めいて気分屋なノラ猫は、それは見事に異界を作りだします。社会の大人達からすれば、何でもないような意味の空白地帯である公園の一角に、猫がたたずむ。すると、風はもう静まって、猫は柔らかい機械の振動へと変わりいよいよ空気を震わせ、一瞬の内に月光を冴え冴えとしたブルーに様変わりさせてしまう。
そうした光景を垣間見たときの、「とんでもないものを見てしまった」という驚きこそが、魂をことほぐ最高の贈り物であり、そのための余地や余白を作りだしていくことこそが、魂に対する敬意の払い方なのです。
今週のキーワード
ゾっとして狂えれば最高に面白い