やぎ座
ひそかな幸福
これまでの総括を
今週のやぎ座は、「大方の月をもめでし七十二」(任口)という句のごとし。あるいは、これまでの人生がひとつの感慨に収斂していくような星回り。
これまでにさまざまな月を眺めてきた。無類に美しいと感じた月もあれば、ひどく悲しい月もあった。それは月の形だけを言っているのではなく、まさに私という人間が生きた現実そのものであった。その意味で、世の中のこともほぼ見尽くしたといっても過言ではないかも知れません。
句意としては、そんなところでしょうか。作者は江戸時代の大名であり、治世における特別な功績は記録にない代わりに歌に優れ、藩の文治発展に尽くしたとされています。
「七十二」とは、干支を六巡した長老にあたる年齢であり、また二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた七十二候の数字でもあります。作者は実際には五十四の歳で亡くなっているので、掲句は実際にその年齢に立った体験を詠んだものというより、ある種の感慨を象徴的に表したものなのでしょう。
同様に、9月2日にやぎ座から数えて「生き返り」を意味する3番目のうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでの自分の人生を振り返りつつ、それらを心から祝福するための言葉を紡いでいきたいところ。
家路を照らしてくれるもの
例えば散歩の帰り道、あなたの握っているリードをグイと引いてくれる犬。
そういう犬というのは、人間のエゴイズムをすべて受けいれ、ときどき主人の手に噛みつきながらも、夕暮れ時になれば「帰ろうか」と促してくれる自然なやさしさを持ち合わせています。
生きているかぎり、人は目に見えない首輪をはずすことなどできず、つながれた場所へと帰っていく他ありません。
そういう悲しさと滑稽さのない混ぜになった感情というのは、心の奥深くまで洗い落とすかのような清冽な働きをもするものですが、同時にそうした働きにこそあなたの気持ちを再び弾ませ、大切なものに気付かせてくれるヒントが現れてくるでしょう。
あるいは、ささやかな楽しみや小さな幸福を求め、それを照らしてくれる「帰り道」を見つけたら、まっすぐに歩を進めていくこと。
今週のキーワード
ことほぎ