やぎ座
失われたものの回復の試み
「環境」から「自然」へ
今週のやぎ座は、里に下りてきた熊を山へと還す決意をすること。あるいは、自分の身を「環境」ではなく「自然」に置き換えていこうとするような星回り。
戦後、日本は列島の大部分を占める山々の広葉樹を針葉樹にかえて、それを材木にするということを国家的なプロジェクトとして行いました。にも関わらず、昭和30年代には材木の輸入自由化をしてしまい、民間に丸投げしてそのケアを一切してこないまま来てしまった弊害がここ10〜20年くらいで一気に噴出してきているように思います。
スギは保水力も弱いので山々が崩れやすくなって水害が多発するようになりましたし、下草も生えないので熊た獣などもエサを求めて里へ下りてこざるを得なくなり、また花粉症はもはやありふれたアレルギー症状となってしまいました。
いわば「自然」にぼうぼうと生えていた記号化不可能な手触りをつるつるに脱毛処理して、複雑な意味を孕んだ次元を削ぎ落し、「環境」という科学概念へとならし続けてきたツケが閾値を超えて支払いを余儀なくされてしまっている訳です。
それは、3.11を契機により分かりやすく露呈したことでもあり、多くの人がそこで忘れかけてきた「自然」というものを直感したのではないでしょうか。
11日から12日にかけて、やぎ座から数えて「力強い情熱」を意味する5番目のおうし座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、いつかどこかの時点でやらなくてはいけないと思っていたことに対してもう先延ばしにできないという思いを改めて抱いていくことになるかも知れません。
想像力の低下と質の破壊
どんな種だって進化の袋小路に入りこんでしまうことはあるものですが、それでも自身の滅亡にみずから手を貸すようになってしまったら、もうその種は絶滅に近いと言っていいでしょう。歴史を紐解けば、同じことは国家においても常に起こってきましたし、企業や文化、宗教、家系、身体などあらゆるレベルの組織に共通する一つのパターンと言えます。
そうした破滅のパターンは、ある種の「質の破壊」から起こります。
つまり、美的でなくなるということ。そしてここで言う「美的」とは、異なるもの同士を結びつけるパターンに敏感であること、量以外のもので生あるものの特徴をとらえること、生あるものに必ず付随する物語が豊かであること等々です。
例えば、エビとカニとを結びつけ、オウムとサルを結びつけ、これら4つの生き物を私自身と結びつけ、その私をあなたと結びつけるパターンとは何なのか?と問うようなことは、ほぼ間違いなく日本の小中学校で教えられることはないでしょうが、美的であることやその結果「質の破壊」を防ぐことに大いに貢献してくれるでしょう。
今週のやぎ座なら、普段なら結びつけて考えることなど想像だにしなかったものと自分とを結びつけていくことによって、わずかながらでも本来の創造性を取り戻していくことができるはずです。
今週のキーワード
美しい存在であるための試行錯誤