やぎ座
初心修行
右も左も見失ってから
今週のやぎ座は、自給自足の暮らしをする「マタギ見習い」のごとし。あるいは、教科書のない修行を体に叩き込んでいくような星回り。
「老人1人が死ぬことは図書館が1つなくなるのと同じこと」。これはアナン元国連事務総長が演説に引用したアフリカのことわざですが、これがほとんど口伝でその知恵や技術が伝えられてきたマタギ(山人)となれば、その言葉の重みはますます増していくように感じられます。
彼らはクマやシカをとるだけでなく、ミツバチや木々や草花の世話までこなし、まさに自然全体を相手にしており、マタギとして一人前になるには3年修行してやっと初級終了くらいの年数がかかるのだとか。
師がやっていることを見よう見まねでやってみるのがマタギ修行の基本であり、失敗して覚えていかなければうまくはならないのだそうです。
そしてこうしたマタギ修行の在り様は、どこか今年のやぎ座の人たちにも通底しているところがあるように思います。
23日にやぎ座から数えて「生活の調整」を意味する6番目のふたご座で、新月を迎えていく今週は、今年一年の中でも特に生活リズムや仕事とプライベートのバランスなどを改めて見直していくには絶好のタイミングとなっていくでしょう。
返るべき「初心」とは
ここで思い出されるのが、世阿弥の「初心忘るべからず」という言葉。ただこの言葉における「初心」とは、普通に考えられているような「最初の志」のことではなく、自分が未熟であった頃の最初の試練や失敗のこと。
試練というのはいつも思わぬタイミングでやってくるもの。そんな時に、自分を助けてくれるのは都合よく手を差し伸べてくれる師や恋人や友人などではなく、いつだって苦しんだ過去の自分に他ならない、と。そういうことを世阿弥は言っているのです。
もちろん、はじめから99%前向きな鉄の志を持てる人なんていないし、そういう志は結局のところ最後まで続かない。逆に99%後ろ向きで当たり前な状況から、「49%後ろ向き51%前向き」なところまで持ち直した時、初めて人は「初心」を手にしていくのではないでしょうか。
今週のやぎ座もやはり、初心に返るべし。他に必要な言葉はないように思います。
今週のキーワード
「老人1人が死ぬことは図書館が1つなくなるのと同じこと」