やぎ座
時代と寝起きを共にする
未来も過去も現在ではない
今週のやぎ座は、河上肇の獄中詩のごとし。あるいは、状況に反してますます心境が清澄に透きとおっていくような星回り。
河上肇はもともと京大教授を務めていた経済学者でしたが、戦前の左翼の地下活動で検挙されて大学の堰を追われ、5年近くの獄中生活を送った後、敗戦の翌年に亡くなるという波瀾に満ちた生涯を送った人でした。
しかし、権力に屈しなかった信念の人として語られることの多い彼の獄中詩を読んでみると、また違ったように見えてくるから不思議です。
「私は牢の中で
便器に腰かけて
麦飯を食ふ。
別にひとを羨むでもなく
また自分をかなしむでもなしに。
勿論こゝからは
一日も早く出たいが、
しかし私の生涯は
外にゐる旧友の誰とも
取り替へたいとは思はない。」
この詩の前置きには「旧い友人が新たに大臣になつたといふ知らせを読みながら」とあります。
7日にやぎ座から数えて「我が身に訪れた幸運」を意味する11番目のさそり座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、改めて自身の今ある幸運を噛みしめていきたいところです。
詩人の魂
ランボーはある手紙の中で次のように書いています。
「詩人になろうと望む人間の探求すべきことの第一は、自己自身を認識すること、それも全面的に認識することです。自分の魂を探索し、綿密に検査し、誘惑し、学ぶことです。自分の魂を知ったら、すぐにそれを養い育てなければなりません」
これは簡単なようでとても難しいことです。というのも、そうして育てた魂は<まったく未知なもの>でなければならぬ、と彼は考えていたようですから。自分にとって<まったく未知なもの>としての魂とは、また多くの人のうちで「目覚めつつあるもの」でもあります。
別の箇所ではこう書いています。「詩人は、その時代に、万人の魂のうちで目覚めつつある未知なものの量を、明らかにすることになるでしょう」と。
その意味で、河上肇は真の詩人に"成っていった”と言えるのではないでしょうか。いま自分が何に触れているのか、それについて向き合っていくことは詩人の魂を育てていくことに他ならないのだと言えます。
今週のキーワード
不運は幸運の在り処を指し示す