やぎ座
自己への驚愕
死と再生
今週のやぎ座は、「蝶われをばけものとみて過ぎゆけり」(宗田安正)という句のごとし。すなわち、自分がもはや後戻りできない変容のプロセスの最中にあるのだという自覚を深めていくような星回り。
俳句の世界では、蝶は春の訪れを告げる可憐で美しい風物詩である一方で、言ってみれば景色を際立たせる舞台装置に過ぎませんが、ここでは確かな意識をもって「巨大なばけもの」として人間を捉えているイメージが記録され、視点の転換を促しています。
確かに、素直に粛々と生物としての本能に従っている蝶を基準に考えれば、人間という種は単に大きさだけでなく、その生態や個々の振る舞いも異常そのものであり、「ばけもの」以外の何ものでもありません。
ここでは「われ」は蝶の目を借りつつ、その観察対象となっている人間でもあるという形で二つに分裂してしまっており、その様態自体がはかない美しさと真逆の、グロテスクなものへと変貌してしまっています。
あるいは、蝶は死のシンボルでもありますから、この句はすべてが静まりきった死の側から見た、生の世界の異常さをそのまま映したものとも言えるかも知れません。いずれにせよ、ここには蝶とわれの間で交錯する視線にゆらぎがあり、静止は許されないのだということは確かでしょう。
やぎ座の冥王星(根本変容)・木星(現実拡張)におひつじ座の太陽(活性化)が次々と鋭い角度(90度)をとっていく今週のあなたもまた、もはや自分が可憐で美しく、または周囲の期待に応えられる存在であればよかった時代の終焉を改めて実感していくことになりそうです。
驚くことは最良の通過儀礼
同じことをもう少し分かりやすい形に言い直すならば、今週のやぎ座のテーマは自分がいかに優れているかを社会に向けて証明していくというベクトルとは全然別の、根本的なところで何らかの「宗旨変えをすること」にあるのだとも言えるかも知れません。
それはあなたがノイズにまみれる以前に、漠然と抱いていた思いや欲求でもあり、あるいは誰かから受け継いだものであるかも知れません。
いずれにせよ、なにか具体的な成果をあげたり、計画したりというより、これまであまり自分と関連付けてこなかったセリフイメージに対して何らかの「手応え」を感じたり、自分なりの決心や確信を固めていくことが肝要です。
驚くことは最良の通過儀礼ですが、こればかりは釣りと一緒で‟引き”を待つしかないのだと思います。
今週のキーワード
グロテスクなイメージ