やぎ座
想起と開け
思い出すべき歴史の一コマ
今週のやぎ座は、「春の馬よぎれば焦土また展く」(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、これまで小さく畳まれていた視点を大きく展開していくような星回り。
春は仔馬の生まれる季節であり、「春の馬」とは若い馬たちが暖かな日差しのもとのびやかに野を駆けることを言います。ただし、掲句が詠まれた舞台は戦後まもない焼け野原。自句自解には、以下のようにある。
「焼跡の交差点で馬が私のすぐ前を芝居の幕を引くように通った。茶色の馬の長い胴体が通り終ると―また元の通りの焼跡が遠く展開した。こんな大きな馬に会ったことはかつてない。」
視界が大きく開かれるためには、普段の日常では決して経験しないような、何か大きなものでいったん視界が阻まれなければならない。
これは作者の個人的な体験談であると同時に、当時の日本で起こり得た人間の覚醒する姿の描写であり、現代の日本人が思い出すべき歴史の一コマなのかも知れない。
20日にやぎ座から数えて「原風景」を意味する4番目のおひつじ座へ、太陽が入り春分を迎えていく今週のあなたもまた、今こそ立ち返るべき歴史や記憶をたどることで、できるだけ視野を大きく広げていきたいところ。
風を待つ
ときどき車輪の中のネズミでいるのをやめて、自分の人生に対する振り返りをしてみることは、やぎ座にとってとても肯定的な効果をもたらすはず。
やぎ座はここしばらく、大きな運気のめぐりにおいて、新しいサイクルに入っていく直前の時期が続いていますが、こうした直前時というのは普段よりも勘や洞察力が鋭くなりやすいもの。特に今週は、ただ事実を追っていくだけにとどまらず、もっと現実の深いところで自分の人生をより自分らしくなるよう、自分に吹きこんできてくれた「風」の存在に思い当たっていきやすいだろう。
この場合の「風」とは、物事の背後に潜み、精妙な影響力として、人生やこの世の摂理を回転させていくものとして、単なる努力や偶然では説明しきれない変化の流れのこと。
こうした普通の常識や、分かりやすい言葉では説明できないような体験の中にこそ、新しいサイクルのスムーズに入っていくヒントが隠されているのだということを、どうか今週は頭の隅で意識してみてほしい。
今週のキーワード
風とは大いなる循環を促すもの