やぎ座
洞にはいる
世に遅れる
今週のやぎ座は、「独活食うて世に百尋も後れけり」(榎本好宏)という句のごとし。すなわち、一周回ったところで先んじていかんとするような星回り。
「独活」は「うど」のこと、歯ざわりが清冽で香り高い春の野菜です。掲句はそれを食べていると、世の中から「百尋(ひゃくひろ)」も取り残されてしまったような気がする、というのです(一尋がだいたい1.5メートルですから、百尋は150メートルくらい)。
畳の部屋で独活を食んでいたら、唐突に、水深150メートルの海の底の白砂にちゃぶ台を前に座っている心地になったのかも知れませんし、あるいは、ふわふわとした雲にすわり鼻腔で春風を感じているような気分になったのかも知れません。
いずれにせよ、作者はそうして「世に遅れる」ことを楽しみつつ、それでよしとしたのではないでしょうか。遅れることは先んじることに通じる。どこかでそうした確信があったのだと思います。
3月3日にやぎ座から数えて「自己健全化」を意味する6番目のサインであるふたご座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、世の中のことより先にまず自分を整えることを意識しつつ、大きく構えて先々を見据えていきたいところです。
憧れを秘める
7世紀の役小角(えんのおづぬ)を開祖とし山岳信仰に基づいて仏教をとりいれた修験道には、深山の奥深く、霊気の集まる洞(ほら)へと入って修行をし、呪力を身につけることで苦しみから救済され、さらに自分だけでなく民衆をも救済していくことができるという考え方があります。
もちろん、山には魑魅魍魎も棲んでいますから、それらを退けつつ同時にみずからの煩悩を払い、清らかな心を取り戻していくことで救済が可能になるとされた訳です。
今週のやぎ座にはいわば、ごく普通の日常にとどまりながら、心だけはその中へと入れることのできる山中の「洞」を見出し、そこに留まりながら、さりげなく日々を過ごしていくことが大切に。
そしてその際、胸のうちに「憧れ」を秘めた過ごし方のコツをつかんでいくことも大きなテーマとなっていきそうです。
今週のキーワード
物事を直線ではなく、円環的に進めていくこと