やぎ座
宣言と刻印
私心なき志を
今週のやぎ座は、トーマス・ペインの『コモン・センス』のごとし。すなわち、新しい常識を決然と宣言していくような星回り。
いくつかの出版社で断られた後、ようやく1776年1月に刊行されたこの書、というよりパンフレットは、アメリカのイギリスからの独立に多大な貢献をし、いわばアメリカを独立へと突き進ませた助産師の役割を果たしました。
大きな社会運動というものは、日常の利害を超えたより上位の価値や正義を示すのでなければ決して成立しませんが、著者はこのパンフレットで次のように述べたのです。
「アメリカの主張はほとんど全人類の主張である。(中略)それは一地方の事件ではなく、世界的な事件である。すべての人類愛に燃える者がこの事件に関心を抱き、温かい目でその成り行きを見つめている。」
さらに著者は、自分の名前を出さずに本書を刊行したのですが、その点に触れて「このパンフレットの筆者が誰であるかは、読者に知る必要がまったくない。注目すべきは主張そのものであって、筆者ではないからだ」と述べることで、作者の意図を徹底的に非個人化されたものとすることで、可能な限り主体を大きくしようとした訳です。
結果、本書は異例なまでのベストセラーとなり、総計50万部が印刷されたとされています。
その意味で、13日(月)から14日(火)にかけて、自分の星座であるやぎ座で太陽と土星と冥王星が正確に邂逅していく今週のあなたもまた、どこまで私心のない理念や意図にコミットできるか、またそれを周囲に伝えていくことができるかが、大きく問われていくことになるでしょう。
タイトルの仕掛け
本書の刊行は、イギリスに対する反逆罪に問われる可能性があり、そこで著者は書かれた内容が即座に人々に伝わっていくための大胆な工夫をこらしていきました。例えば、冒頭で次のように述べています。
「これから述べることは、単なる事実や分かり切った議論や常識に過ぎないものである。どうか読者は偏見や先入観を捨てて、もっぱら理性や感情に従って自分自身で判断を下していただきたい。」
つまり、まず市民のコモン・センス(常識)に次のように訴えることで、アメリカ独立は「常識」なのだと判断しやすくした訳です。さらに、
「結論を述べると、(中略)断固とした独立宣言以外には、現在の事態を速やかに解決できる道はないのだ。これを裏付ける多くの力強い明白な理由を挙げることができる」
と冒頭近くで明快な結論と枠組みを与えている点などを見ても、人の心を動かす術や人間の心理傾向を著者はよく知っていたのだということが分かります。
今週のあなたもまた、それくらいの歯切れの良さを目指し、できうる限りの創意工夫でみずからの思いを周囲に深く強く刻印していって欲しいところです。
今週のキーワード
決然と言い切ること