やぎ座
手前の現実を超えて
言葉の重み
今週のやぎ座は、「それぞれの星あらはるる寒さかな」(炭太祇)という句のごとし。あるいは、何か大きな大義や目的のために自らを駆動させていくような星回り。
冬は星がもっとも美しく輝く季節であり、その輝きや大きさも、地球との距離も異なる星々がいっせいにあらわれてくる様子に、いつの時代の人びとも息を呑んできたのでしょう。
作者は今から約300年前の江戸中期の人で、俳人や遊里の主人たちとの付き合いの他に、島原の女性たちに俳諧や手習いの教授も行っていたようです。
彼女らの句には百人一首のパロディなどもあり、歴史上の才媛たちのことを想うと実におもしろい対照をなしていますし、作者もまたそのことにある程度、自覚的だったのではないでしょうか。
だとすれば、掲句の「それぞれの」という言葉にも、歴史的な重みと作者の覚悟が十分にのせられているのだということに気が付いてくるはず。
12日(木)にやぎ座から数えて「調律」を意味する6番目のふたご座で満月を迎えていく今週は、いまの自分がどれだけ周囲の人々が求める文脈や役割に合致できているのか、改めて浮き彫りになっていきそうです。
いい表情を取り戻すこと
今も昔も、冬の星々に心動かされる時というのは、大抵、おのおのの星の連なりや関わりが星のまたたきと共に揺らめいているその様を眺めている時なのだとも言えるかも知れません。
そうして、意識と無意識の境界線で心を遊ばせることができた時、人は目先の対象を超えて、境界線の向こう側へ目を向けていくようになって、自然といい表情になるのです。
いまの自分と、遠い過去の誰かとが、星を通じてつながっていく。それは夢か幻か、それとも現実と地続きの忘れかけていた記憶の光景か。
今週のあなたもまた、飲む酒は安くても夢みたいなことばかり語っていた頃の自分に立ち戻っていくつもりで、現実の境界線をたゆたっていきたいところです。
今週のキーワード
歴史的文脈