やぎ座
嘘っぽさを雪いでいく
真実味のある言葉
今週のやぎ座は、「瓜揉んでさして命の惜しからず」(鈴木真砂女)という句のごとし。あるいは、さっと自分を低めていくような星回り。
もし男がいかにもそれらしい顔をして「命なんて惜しくない」と口語で伝えたとしたら、今どきこれ以上うさんくさいものはありません。
ただ同じ意味の言葉でも、それを女性が文語で、台所で「瓜(うり)」を揉みがてらさりげなく言ってきたのだとしたら、これ以上艶めかしく感じられるものもないような気がします。
きっとそばでそれを聞かされて、どきっととしない男はいないでしょう。
掲句が詠まれたのは作者が70代に入ってからですが、特に「さして」というところなどは、人生のさまざまを経験してきた作者だからこそ出せる女のさらりとした表情なのかもしれません。
その意味で、16日(金)にやぎ座から数えて「見えない資産」を意味する2番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週は、自分の積み重ねてきた経験や思いの蓄積をすくいあげていけるかが問われていくでしょう。
「自分を低める」ということは、ある意味で最高のパフォーマンスを発揮するためのルーティンでもあるのです。
真実だけを述べることを誓えますか?
例えばゾロアスター教にも、最高神アフラ・マズダーに従う七人の善神の一人に「アシャ・ワヒシュタ」という神さまがいます。
アヴェスター語で「最善なる天の理法」を意味し、中世以降の神学では火の守護神とされ、ついには聖火そのものと同一視されていきました。
そんなアシャに付随する意味は非常に多岐にわたっており、ここではとてもそれらを網羅することはできませんが、あえて最も重要な意味を一つ挙げるとすれば「真実」でしょう。
つまり聖火とは「偽り」の敵対者であり、 「不浄」を決して許さず「清浄」をもってその敵対者を焼き尽くす神であると。
今週のあなたもまた、それくらいの厳しさで自分の言葉や心情を清めていくくらいのつもりで過ごしていきたいところ。
おそらく、そうした清めの門を何度もくぐってきたからこそ、掲句の作者もまたその紡ぎだす言葉に真実味が宿っているのでしょう。
火の神は確かに恐ろしいですが、その通過儀礼を経た言葉は、永遠に刻まれるほどの力を得るのです。
今週のキーワード
狭き門