やぎ座
呆然自失
ただ「紛失す」
今週のやぎ座は、「夏の海水平ひとり紛失す」(渡邊白泉)という句のよう。あるいは、海に呑まれるがごとく不意に日常のくびきから解放されていくような星回り。
夏といえばプールに水着に海と青春!
それが平和な時代の古きよき慣習というものですが、ただこの句においては、海は遊びや恋を実らせる場ではなく、戦争をして殺し合いをしなければならない場所となっています。
艦の上から、水平がひとり行方不明になってしまった。不測の事故でも起きたのか、それとも追い詰められて自殺してしまったのか、その事情は明らかにされません。
ただ、ここでは「紛失す」という言い方が人間をさながら子どもがカバンにつける小さな人形のような、あまりにちっぽけで心許ないものに感じさせてくるのです。
今週はやぎ座から見て「パートナー」や「対人関係」を意味する7番目のかに座で新月が起こり、さらに愛情や親密さの星・金星もそれに続けてかに座入りしていきます。
その意味で、たった一人の人間であれ、本来思い通りに事を運んだり、コントロールなどしようがないのが「他者」というものなのだということを、改めて思い出し噛みしめていくことが今週のあなたのテーマになっていくでしょう。
分かれ道をゆく作法
昔から、分かれ道に大きな樹が一本生えている三叉路が好きでした。
夜にそこを通ると、昼間とはまったく別人のように暗い影を落としていて、こちらの心を試し、迷わせるのです。そこでどちらの道をゆくかを勘だけで決めるのですが、何度かやっていると、たまに「あ、こっちで正解だった」と妙に確かな手ごたえを感じることがあるのです(散歩なので、本来ならばべつに決まった正解などありません)。
おそらく、それは雰囲気に流されないで、自分の体調や気分にマッチした方の道を選べたということなのだと思います。
考えてみれば、私たち日本人というのは、純粋に自分のことだけに集中して何かを選択をするということがほとんどできてないか、たまに出来たとしても苦手としているように思います。
いつも頭に誰かの顔や視線が浮かんでその相手の意図を無意識のうちに汲みとって行動していますし、実際に誰かと一緒にいる場合は相手に選択の主導権を押しつけていたりする。
ですが、今週はあなたの番です。人の顔色をうかがうのではなく、ただ自分の身体や感情と対話しつつ、歩くべき道を選んでください。たとえ誰かとの繋がりが決定的に切れていくとしても。
今週のキーワード
他者に対し、私はどうすることもできない