やぎ座
生きがいを育てる
神谷美恵子に照らして
今週のやぎ座は、さながら「意味の眼」を開いていくような星回り。あるいは、これまで体験したことのないような自己との対話へ導かれていくこと。
ハンセン病患者の心のケアに取り組んだ精神科医の神谷美恵子はこの「生きがいについて」という本の中で、「毎朝目がさめるとその目ざめるということがおそろしくてたまらない」といった言葉を絶するような深い悲痛の奥で、人がいかに「生きがい」を見出していくのかということについて、次のように書いています。
「心はその葛藤のためにひきさかれて、いつまでも苛まれる傾向がある。自分を許したいけれども、どうしても自分を許せないという苦悩である。このような心にどうしても必要なのは、自分とは無関係な、権威ある他者からのゆるしの声である。その声は師を通して響いてくることもあろう。また経典から響いてくることもあろう。時にはどこからともなくしずかに響いてくる場合もある。」
この言葉は、神谷自身の体験に基づいたものでもあったのでしょう。その意味では、「師」とは信頼できる人物や先生に限らず、思いがけぬ教訓を与えてくれる友人だったり顔見知り、自分が救う側のはずの患者の場合もあったはずです。
また、「経典」も医学書や聖書に限定されないさまざまな書物(彼女はアメリカ留学時にはギリシャ文学を専攻していた)を意味したでしょうし、自然の懐に抱かれた時、ただならぬ感慨に打たれたこともあったはずです。
過ち多き存在であれど、そのままに許される瞬間がある。人や書物や自然との対話の中でそうした瞬間を経験していくとき、意味の眼は開き、人は「生きがい」と出会うことがある。
やぎ座から数えて「内省と準備」を意味する6番目のふたご座での新月へ向け、月がだんだん闇へと閉じていく今週は、そうした「生きがい」体験を少しでも自分の元へと手繰り寄せていきたいところです。
自分という大地とそこに咲く花
イチジクは花らしい花が見えないまま、いきなり果実が育ち始めますが、外から見えないだけで、実際には果実の内側に小さな花がたくさん並んで咲いています。これは、「必ずしも花は外に向けて咲く訳ではない」ということを示すちょうどいい実例と言えるでしょう。
それを今週のあなたに向けて率直に言い直せば、誰か他の人に“見せる”ための花はもういらない、ということ。
自分という大地にしっかりと水をまいて、余計な言葉や愛想笑いをそぎ落とし、潤いと喜びを取り戻していきましょう。やるべきことをやっていけば、「意味の眼」という花は、「生きがい」という果実は、必ずやそこに育ってきてくれるはずです。
今週のキーワード
ゆるしの声