やぎ座
深いところからの揺さぶり
能という表現の型
今週のやぎ座は、現実世界に対するあの世の‟せり上がり”の表現としての「能」のごとし。あるいは、変容に身を委ねることで、“それ”の訪れを待っていくような星回り。
メインの登場人物に必ず死者を登場させ、彼らに何かを語らせる「能」という表現形式においては、いと高き天の神に向かって祝詞を上げて呼びかけ応えてもらうようなコミュニケーションは有効に機能しない。
ただ、コミュニケーション以前の潜在空間に棲まう大地の霊の出現を、空間を幽玄にしつらえた上で、身体性や偶然性に任せつつ、時にまともな人間であることさえ放棄して待っていく他ありません。
そして、こうした能に見られるような、後ろ向きに後退しつつ、まったく直感に従ってジャンプしていくような「変化」こそ、今のやぎ座のあなたに相応しいものであるように思います。
冒頭に挙げた“それ”とは、そうした類の変化を担う主体。ふだん自分が見ている現実の支えでありながら、現実全体を包摂しているより大きな潜在世界であり、生と死が混然一体となったカオスモスでもあるのです。
今週は、自分が望む秩序の根源的な姿について、想いを馳せてみるといいかもしれません。
夜風のささやきと共に
かつて「馬は死後何になるか? 光の馬になるに決まってる」と言った人がいましたが、これが自分のこととなると、さっぱり分からなくなります。それに、確かに死ねば文句はなくなりますが、死ねないことが問題というか。
われわれは醒めても醒めてもなお醒めなければならず、そういう永劫の悪夢の中にポイと放置されているかのようにも思えます。
それでも日が暮れて、風が吹き、空に星が瞬いているのを見かける頃には、束の間のあいだ精神は記憶の上澄みのように透きとおって、これまで見えていなかったものが見えるようになります。
そういう時の、どこかニュートラルで、ごまかしのない眼差し(=‟それ”)が、今週のあなたにおいては凄味を増して力強く現れてくるでしょう。
いつもなら気にも止めていなかった現実や関係性の中に、何か引っかかるものがないか。あるいは、ここのところ忘れていたような長年の疑問をほどくヒントがあたりに転がっていないか。
するどく、はげしく、心のままに、問うてみてください。
今週のキーワード
幽玄なる潜在世界