かに座
満足したらそこでおしまい
本来の意味の「ノーブル」
今週のかに座は、“高貴なるものの義務”を意味する「ノブレス・オブリージュ」という言葉のごとし。あるいは、未来へ向かう心の姿勢を整えていこうとするような星回り。
冒頭の言葉について考えるとき、いつも思い出す人物に神谷美恵子がいます。彼女は19歳の女学生の時にハンセン病患者の実情を知ったことをきっかけに、親の反対を押し切って30歳で精神科医となった人物で、51歳で刊行した『生きがいについて』の中では、次のように述べています。
ほんとうに生きている、という感じを持つためには、生の流れはあまりになめらかであるよりはそこに多少の抵抗感が必要であった。したがって生きるのに努力を要する時間、生きるのが苦しい時間のほうがかえって生存充実感を強めることが少なくない
もちろん、自分ひとりだけではなかなかそうした「生存充実感」を感じられないという人は少なくありません。神谷はそうした人たちへの処方箋として、何かしら他者へ貢献できることを探してみるという基本の徹底を説いていきます。
お金持ちや高い地位についている訳ではなくても、自分なりに他者を喜ばせ、献身できるきっかけをつかんで「生きがいを感じているひとは他人に対してうらみやねたみを感じにくく」、そこには自然と「未来に向かう心の姿勢」が培われていく。そうした姿勢こそが、本来の意味での「ノーブル」ということであり、それは生きがいを感じつつ、使命感を持って自分の身を捧げることと切っても切り離せないのです。
12月27日に自分自身の星座であるかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分にとって生きがいとは何かということを、改めて掘り下げ直してみるといいでしょう。
ささやかな抵抗
この宇宙は大原則として、あらゆるものがエントロピーが増大する方向にしか動きません。つまり、秩序あるものは混乱し、集まったエネルギーは分散していく定めにあるのです。
ただ、そうしたエントロピー増大の法則に対して、絶え間ない“抵抗”を行っているのが人間の身体であり、そのひとつひとつの細胞なのだそう。
つまり、エントロピー増大の法則にしたがって作られた細胞はやがて壊れていきますが、自然に壊れるのに先回りして自分を壊し、その不安定さを利用して新しい細胞を作り出す活動をしているのです。
生物学者の福岡伸一さんは、こうした絶え間なくすべての細胞を入れ替え続けることで「生きて」いることを可能にしている細胞レベルの抵抗を、生命の「動的平衡」と呼びました。ある意味で、今週のかに座もまたこれと同じことを、一個人ないし人生という単位で行っていこうとしているのかも知れません。
かに座の今週のキーワード
自分がいま抗うべき分散と混乱はなにか?