かに座
人外的戦略
人間的発想に囚われないこと
今週のかに座は、コヤツクリ科の鳥のオスの求愛行動のごとし。あるいは、単なる効率的な魅了や生殖に還元しえない、性の多様性を取り戻していこうとするような星回り。
動物たちへの哲学的な分析を重ねてきた思想家のジャン=クリストフ・バイイは、ニューギニアとオーストラリア北部のコヤツクリ科の鳥のオスが、周辺のくずを拾い集めて芸術的な小さな箱庭を作ってメスを誘惑する習性を取りあげて次のように述べています。
生きる意志は、食糧や性的パートナーを探す時期に最も強くなるが、実は動物を混乱させ、ひどい目にあわせもする。それは、出来あいの答えを提供するのではなく、たくさんの作業(障害の克服、計略の練り直し、通り道の再掘削など)を通して、絶えざる問いかけとなって現れる。動物がまだ多く生存する場所に足を踏み入れた途端に私たちがいつも感じる、あの絶えず忙しそうな感じ、休みなく活動しているという印象は、そこから来る。まるで私たちの周りのいたるところで、生命が自らを探索しながらざわついているかのようだ。
つまり、コヤツクリ科の鳥のオスにとって、求愛行動は単なる美しい儀式などではなく、何らかの不測の緊急事態が現われ続ける、果てしない悩みの種であるかも知れず、潜在するリスクの海の中でたまたま何事もなく表出したものが、“はかない刺繍”のように人間側に見えているに過ぎないのだと考えられるだろうと。
いずれにせよ、動物というのは同一の種であっても、大人数で行う二人三脚のようにいっせいに歩調を合わせて歩んでいくものではなく、星のように散らばり、きらめきながら、てんでばらばらな方向を向いて冒険を試みていくものです。
29日にかに座から数えて「性(セクシャリティ)」を意味する8番目のみずがめ座の半ばに太陽が達して立春を迎えていく今週のあなたもまた、そんな鳥たちのごとく、定型から外れた動きと、たえざる問いかけとを、自身の性(セクシャリティ)に取り戻していくことになるでしょう。
意外なしたたかさ
蝶の社会ではこれまで1回交尾したメスは一生貞操を守り、浮気などもってのほかだと考えられてきましたし、どこかで人間社会に重ねられてもきました。
ところが、最近の研究では、多くの蝶類のメスは生涯に何度も交尾し、交尾ごとにオスに注入された栄養分を吸収し、自らの体調維持や卵生産のエネルギー源に利用していることが分かってきたのだそうです。
メスにとって卵を作ったり産卵したりするためには多くのエネルギーが必要になります。そのエネルギー源を獲得する一つの戦略としてオスをその気にさせてエネルギーを得ているということです。実際に受精に関与するのは最後に交尾したオスの精子のみ、それ以前に交尾したオスの精子はメスの栄養になってしまうというわけです。今週のかに座もまた、それくらいしたたかな生存/生殖戦略を立てていくべし。
かに座の今週のキーワード
古い常識や刷り込みから外れていく