かに座
文脈の“外部”への感受性
<ずれ=すき間=ギャップ>を見出すこと
今週のかに座は、「映画でいいの?」というツッコミのごとし。あるいは、問いと答えの関係をこじらせていこうとするような星回り。
何かの講義でふと講師が「生きるって何でしょうか?」と問いかけてきた場面を想像してみましょう。これに対して人工知能的に解答するなら、すなわちこれ以上問題について考えなくていいという状態にさっさと達しようとするなら、例えば黒澤明監督の『生きる』という映画作品だったり、雪降る公園でブランコをこぐシーンを提示すればすむでしょう。
ただ、当面の答えとしてその場は落ち着くとは言え、家に帰って冷静になって考えてみると「映画でいいのかよ」と思わずツッコミが入りそうです。つまり、「映画」という特定のジャンルに縛られた文脈を離れて、別の文脈にあたってはじめて、「生きるって何?」という問題と映画作品「生きる」のあいだにある<ずれ=すき間=ギャップ>に気付くことができる。
さらに言えば、そこで生じた疑いは問題と関係のあいだの適切さだけに留まらず、しばしば問題そのものにも向けられていきます。「そもそもこれは問題として成立しているのか?」と。これが人工知能なら、問題と解答の文脈の“外部”を徹底して排除するでしょうから、逆に言えばそうした直接的な文脈の“外部”を感じることができるかどうかが人工知能と人間の決定的な差でもあるはずです。
その意味で、12月8日にかに座から数えて「意識の外」を意味する12番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、固定されがちな問いと答えの関係をこじらせ、脱臼させたり、その結果予想もしていなかった“何か”を召喚するといったことが起きていきやすいでしょう。
行間に潜むメッセージ
人間心理についての鋭い洞察で知られるラ・ロシュフーコーは、その怜悧な知性によって数々の偽善や自己欺瞞を暴き出してみせましたが、中にはそうした冷たいトーンとは一線を画する一言を垣間見ることがあります。
純粋で、ほかの情念がまったく混じらない愛があるとすれば、それは心の底に隠されていて、われわれ自身も知らない愛である。
自分自身でも気づいていないような愛があるとすれば、周囲にある全てが引きずられ沈み込むような淋しさをさえ受け入れる海のような何かでしょうか。少なくとも、そういうものに支えられることで、私たちは人生という航路を現に航行できている。だからこそ、ときどき目的と手段、問いと答えの結びつきをゆるめて、地図をひろく使うことを私たちは思い出さなければならない。
ラ・ロシュフーコーはそうした言外のメッセージを投げかけてくれているのかも知れません。そんな彼の読者との関係の作り方には、今週のあなたを啓発するのに十分な愛が確かにあることが分かるはずです。
かに座の今週のキーワード
われわれ自身も知らない愛