かに座
吐息の調和をめざして
友愛の経済
今週のかに座は、現代社会の呪縛を断ちきる鋭い一刀両断のごとし。あるいは、職業と所得、労働と報酬の結びつきを思い切って切り離していこうとするような星回り。
かつてルドルフ・シュタイナー(1861~1925)は「所得と職業、報酬と労働が一つになってしまっていること」が現代社会の悲惨な混迷の原因であり、「同胞のために働くということと、ある決まった収入を得るということは、ほんらい完全に分離した二つの事柄である」と述べていました(『シュタイナー危機の時代に生きる』)。
確かに私たちは、現状、会社や社会のなか就いている役割や職業に応じて報酬が決まることが当たり前だと思っているところがあります。これはかなり無意識に近いところでの“感じ”なので、改めて意識するのが難しい話ですが、例えばもし、ある人の生活に必要な収入が足りなくなってしまったとき、必要な収入が得られるように、役割ないしポストを交換しようといった提案は受け入れられるでしょうか?
正直、自分が社会や会社内で有利な立場にいるほど、難しく感じられるはずです。ところが、シュタイナーはこうも言うのです。
個々人がその仕事の収益を自分の権利として要求することが少なければ少ないほど、つまり彼がその収益をその共働者と分かち合うことが多ければ多いほど、また彼自身の欲求が彼の業績からではなく、他者の業績から満たされることが多ければ多いほど、共に働く人びとのすべてを癒すものはますます大きくなっていく(『精神科学と社会問題』)
17日にかに座から数えて「経済」を意味する2番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、エゴイズムの追求とは対極的な仕方で、自分なりの経済の回し方を実践してみるといいでしょう。
吐く息が合う関係
オギャーと生まれてきたその日から、私たちはつねに息をしてきたし、やがて息を引き取るその日まで、独りの時も誰かと共にいる時も呼吸をし続けなければならない訳ですが、関係性の好みで言うと、若い頃は特に「吸う息」の合う相手を求めやすいように思います。
「吸う」は英語で「inspire」と表し、名詞形にすれば「インスピレーション」になります。つまり、同じアーティストに影響を受けたり、似たような背景を共有できる相手こそ最良の友と考えやすいのです。ただそれは間違いではないものの、必ずしも唯一絶対の回答ではないはずです。
なぜなら、人間の生き様というものは、何にどれだけ影響を受けたかというだけでなく、周囲にどんな影響をどれだけ与えたかということによっても規定されていくものだから。
その意味で今週のかに座は、「自分という人間はこの世の何に寄与していこうとしているのか」、「また誰となら吐息としての生き様が調和できるのか」、といった視点をできるだけ大切にしていきたいところ。
かに座の今週のキーワード
他者の業績から満たされているか、満たされるなら誰か