かに座
相互貫入の深まり
※1月10日〜16日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。次回は1月16日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
共に在る感覚
今週のかに座は、みずからの分身を得ていくような星回り。あるいは、これまで遠くに感じていたものがグッと近くに引き寄せられていくこと。
情報学者のドミニク・チェン氏は『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』という本の中で、自身がモンゴルで結婚式を挙げたときに贈与された馬の話を書いています。それは即興の結婚式で、滞在先の家長が父親役を演じ、馬に乗って娘を娶る許可を取りに行くという儀式を行ったのだそうです。
その際、父親役だった男性の兄から、「馬をあげよう」と申し出を受け、戸惑っていると、「あげる」というのは「(物理的に)持って帰れ」という意味ではなく、「この馬はここにいて、自分たちが世話をするけれど、君たちがまたここを訪れたときはいつでも乗っていい」という意味なのだと教わったのだとか。
チェン氏はこれを文化人類学者の木村大治のいう「共在感覚」と結びつけつつ、この馬がチェン氏の分身となって、自分とモンゴルの人々や景色とを、物理的な距離を超えてつなげてくれたことで、日本にいてもそれらを思い出すことで「共に在る」ことが可能になったのだと語っていました。
2022年1月3日にかに座から数えて「自分と自分でないもののあいだ」を意味する7番目の星座であるやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分からすっかり離れてしまったと感じていた相手や場所に対し、改めて「すぐそこにいる」という想像力を取り戻していくことがテーマとなっていきそうです。
贈与と負債の網目の中で
経済がグローバル化し、世界が単一の文化に覆い尽くされた「モノカルチャー」へまっしぐらになってしまった現代社会では、すべてを「交換」して生きていくことが可能とされ、経済的合理性や「コスパ」が推奨されて、それ以外のものを忘れさせられていきます。では、何を忘れさせられていくのか。
それはおそらく、自分が何か大事なものを誰か何かから「贈与されている」という感覚や記憶でしょう。食料であれ、棲み処であれ、安心や自由や精神的成長であれ、それらは基本的に宇宙や地球からの絶対的贈与を受けることで成り立っているはずですが、本来なら贈与であるべきものが「想定外」とか単に「ネ申」の一言で片づけられて、「もらった」という記憶がきれいさっぱり削除されてしまったりする。
その結果として、根本的に自分たちが脆弱な存在で、たくさんの「贈与」を「負債」として抱えることでやっと成り立っているのだという認識や、「おかげさま」という感覚さえも忘れ去られていっているのではないでしょうか。その意味で今週のかに座は、既に自分の一部であるところのものを改めて外部に発見していけるかも知れません。
かに座の今週のキーワード
そばにいるね