かに座
野良のたましい
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
野趣の横溢
今週のかに座は、「野ばくちや銭の中なるきりぎりす」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、野趣と無法を組み合わせて思いきり暴れ回っていこうとするような星回り。
作者が五十二歳頃の初秋に詠まれた句。ここで言う「ばくち」とは、さいころでやる丁半ばくちのこと。通常は屋内で行われるものですが、この場合は文字通り野っぱらで打たれたものだったのでしょう。
草むらとか竹藪の中だとか、とにかくそんな野性味溢れる博打を打っていれば、銭(ぜに)の中に「ぎす」だって混ざり込むもの。すなわち、「きりぎりす」が振られたサイコロの入ったツボ皿の中で“ちょんぎーす”と鳴いているだろう、と。
人間と自然が一緒になって偶然と戯れている。作者はその様子を横から見ていて、野趣と無法の組み合わせぶりに大いに興奮していたし、楽しくて仕方なかった。掲句からは、作者のそんな呼吸の弾みが今にも伝わってくるようです。
あえて掲句を詠んだ際の作者の心の声を勝手にかぶせてみれば、「なっちょいのちとあそんべーや」といったところでしょうか。
16日にかに座から数えて「遊び」を意味する5番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、真面目に規則通り進めるだけじゃつまらない、と言わんばかりに、規定の手順や一般的なやり方からはずれた方向へなにかと進みたがるはず。
純然たる無法者であれ
詩人に限らず、芸術に関わってきた者たちの歴史を紐解けば、古来より「何を知り、何を為すべきか」という問いに対し社会が用意する答えや役割にハマらず、余計なことばかり知りたがり、やりたがる者たちによって、「魂」の多様性は耕され、育まれてきました。
例えば日本神話においても、日本で最初に和歌を詠んだとされる芸術神スサノオは、神話においてしばしば無法者や乱暴者とされ、規定された定位置から追放されてフラフラとさまようことで、創造性を開花させ、その種を撒いていきました。
また、他の世界各地の神話を見ても、多くの場合、魂は自然に翼を生やして飛び立つことができるものとされ、定位置から遠く漂うことで霊的気息を整えていったのです。
今週のかに座もまた、「~すべき」といった意識の呪縛をできる限りほどいて、精神に幾らかの「逸脱」をもたらすこともまた心がけてみて下さい。
かに座の今週のキーワード
スサノオの系譜