かに座
逢い別れる人生
合縁奇縁
今週のかに座は、「襟巻となりて獣のまた集ふ」(野口る理)という句のごとし。あるいは、ざわざわするものが背中を走っていくような星回り。
今はもう街ゆく人々の首から獣の襟巻きはだいぶ消えてしまいましたが、少し前までは冬場にリアルファーのキツネの襟巻きを身につけている女性はさして珍しくはなかったように思います。
掲句では、結婚式の二次会なのか何かしらのパーティーなのか、人間たちが集まる会場のクロークの片隅で襟巻たちもまた密かに集結し、生きた獣のように群れとしての意思を宿していく模様が描かれており、やはりどこか楽し気な気配を漂せています。
相互関係によって成り立つヒエラルキーの有無が、単なる群れと“社会”とを区別する上での重要なポイントとされますが、かえってヒエラルキーなどない方がよかったのだとも感じてしまいます。
21日にかに座から数えて「縁とネットワーク」を意味する11番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、上でも下でもなく、ただ純粋に興味や関心を分かち合える関係性の価値を改めて見直していくことになるはずです。
中世詩歌における「会」や「見」
例えば日本中世の詩歌や歌謡を見ていくと、そこには「会う/逢う」ことへのおそれを渇きがぞろぞろと湧出してくることに気付きます。
しかも、そうした「会」やただ「見」とされる言葉は、必ずしも叶えられないもの、遂げることができないものというニュアンスで使われることがほとんどで、ついにはむしろその未遂を願う悲歌のためにそうした言葉があるようにさえ感じられてくるのです。
時代こそ隔絶してはいますが、今週のかに座にもそうした中世の詩歌・歌謡に通底する雰囲気がそっと流れ込んできているように思います。
「見る」「会う」「しのぶ」といった動詞や、「いのち」「おもかげ」「ちぎり」「なみだ」といった名詞などにも特別な感慨が湧いてくるかも知れません。
今週のキーワード
点と点が繋がって線となり、形となる