かに座
何かがうしろからやって来る
拭いきれぬ臭い
今週のかに座は、「うしろから大寒小寒夜寒(よさむ)哉」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、いつかは向き合わなくてはならなかった因縁に手を伸ばしていくような星回り。
日が暮れると寒くなる。大寒(おおさむ)小寒(こさむ)、山から北風小僧がとんできた。
うしろから、夜の小僧がとんでくる。
どこかそんなおとぎ話やわらべ歌を連想させる一句。おそらく江戸の市中でつくった句でしょうが、どこか作者の故郷である北信濃の迫りくる山並みが目に浮かぶようです。
特に「うしろから」というのがいい。重く暗いものとしての夜や冬が、軽やかなリズムのなかでかえって存在感を増していくように感じられます。こうした土臭さというか、ぬぐいがたい百姓としての“地”のようなものは、現代人が小手先で詠もうとしてもなかなか出てきません。
そしてそうした土臭さは、どこか晩年に近づくまで苦労の連続だった作者の生き様にも繋がってくるようです。
22日にかに座から数えて「拒みようのない結びつき」を意味する8番目のみずがめ座の始まりで木星と土星の大会合が起きていく今のあなたもまた、あくまで軽やかに身のうちの「重く暗いもの」をそっとほどいていくといいでしょう。
「成長」などしない
人間のこころというのは、ほんとうに発達心理学が提示する成長モデルのように直線的な発達を遂げるものなのかと考えてみるとき、例えば「三つ子の魂百までも」という諺のように、私たちは別のモデルやイメージにも自然と親しんでいることに気が付きます。
環太平洋地域には昔から、子供の魂に祖父母や曾祖父母の魂との同一性を見出すという伝統がありましたし、人は家族の一員である以前に「個人」であるという発想も根拠をさぐれば、案外脆いものかも知れません。
今週のかに座はいつものように大人な自分、年相応な私というアイデンティティーのままでいようとすると、キツくなってきてしまうかも知れません。
逆に言えば、そういうものにこだわるこころををいったん外すことさえできれば、いつまでも社会化されることを免れ、永遠に「成長」などせず、老いているんだか子供なんだか、個人なんだか集団なんだかよく分からないような自分自身を受け入れていくことができるはず。
今週のキーワード
めぐりあう時間たち