かに座
街の中に隠れる
隠遁事始め
今週のかに座は、街の中に隠れる隠者のごとし。あるいは、どうしたって隠れることの難しい現代社会において、世間の普通と反対のことに励んでいくような星回り。
『方丈記』の昔から、この国にはたとえ人生でどんなに栄華を極めようと、最後は名声も、家や家族も捨て、山で小さな庵を編んで、つつましやかに暮らしながら最期を待つのが何よりの幸せという、美しい理想がありました。
今やそうした理想は、歴史上の出来事として現実味を欠いた絵空事のような扱いを受けるようになってしまいましたが、今でもそうした理想に向かって人生をたえず整えたい、踏み出していきたいと考えている人たちは一定数いるのではないでしょうか。
もしかしたら世界一のスピードで動いているかもしれないターミナル駅を幾つももつ慌ただしい東京のただ中で、例えばごく小さな部屋を借り、どうしても必要な分だけ働いて、あとは本を読んだり、音楽を聴いたり、ちょっとした手仕事をして、静かな毎日を過ごしている人が、今もなお少なからずいるとしたら。この国もまだまだ捨てたもんじゃないな、そんな風に思えるはず。
23日に太陽がさそり座に入ると同時に、かに座から数えて「小さな死」を意味する8番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな「街の中に隠れる」遊びに興じてみるのも悪くないでしょう。
生活の大黒柱
現代というのは「父親不在」の時代であって、社会も人もどこかでつねに父的なるものを求め続けていますが、これは言い換えれば何をおいても一家に一台これがあれば生活は回ると言えるものを持ちえるか、ということが問われているのだとも言えます。
つまり、家というのは、代をくだるに従って核分裂していくものですが、「父親不在」の時代というのは、昭和から平成、そして平成から令和へと時代を経るにつれて、だんだん何を「一家に一台」として持つべきなのかが不明確になってきてしまったという事情が背景にあるのではないでしょうか。
今週のかに座はそんな時代の流れに反するように、言葉で大風呂敷を広げるのではなく、具体的に自分の生活のの中心に何を置き、底から自分はどんな恵みを受けていきたいのかということについて、改めて思い描いてみるにはちょうどいいタイミングと言えます。
今週のキーワード
「父親偶像」が成立しえない時代に