かに座
わだば日本のユングになる
一個の生きた深層心理
今週のかに座は、「布置(コンフィギレーション)」すなわちシンボルの置きぐあいとしてのユング心理学のごとし。あるいは、自分がほしがっている「補償」に注目していくような星回り。
ユングという人は現代人がイメージするような心理学者というより、「一個の生きた深層心理」と言った方が近く、したがってユング心理学とは何かなど、本来は急いで説明したり解説したりするべきものではないのだろう。
ただあえてユング心理学の特徴について述べれば、それは「布置」であり、心とはさまざまな自分を表すシンボルの置き具合に他ならず、自我(エゴ)と自己(ゼルプスト)であれ、童子と老賢者であれ、ユング心理学の中身は大体が二つ以上の自分自身の‟対話”から成り立っている。
そして重要なことは、ユングが個人の無意識のうちに「自我の中心」ではなく、むしろ自我がほしがっている「心の補償作用」を見ようとしたこと。つまり人のひねりだした思想や宗教だって、何かのついでの補償作用なのかもしれないと彼は見なしたのだ。
3月22日に試練と課題の星である土星が、かに座から数えて「他所からの頂きもの」を意味する8番目のみずがめ座に入っていくあなたもまた、生きていく上で自分がどれくらい他者から力を借りなければならないのかを再認識しつつ、そのやり方について学んでいくことが当面のテーマとなっていくはず。
秘密と予感
おそらく人が何か大事なことを解りかけた時というのは、すべからく孤独なのではないでしょうか。
つまり、安易な交わりで自分と他人をごっちゃにしてしまうことが間違ってもないような、冬の寒が明けてもなお残る寒さや怜悧な空気の残滓のようなものをじかに肌で感じる時に初めて、目に見えない真の交わりへと開いていくことができるのではないか。
これについてユングは最晩年に刊行された『自伝』において、次のように言及しています。
「われわれがなんらかの秘密を持ち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」
ユングからすると、人からもらう滋養とは、どこかの時点で自分だけの秘密にならざるを得ないものであり、補償に目を向けていくとは、恐らくそういうことなのでしょう。
今週のキーワード
光を背にして大地と向き合う