かに座
夢は夜ひらく
思い寝の恍惚境
今週のかに座は、夢殿にこもった聖徳太子のごとし。あるいは、聖なるものと交わる夢という古い回路がどうしようもなくつきまとってくるような星回り。
日本では昔から恋の唄で「夢の通い路」や「夢路」といったことがしばしば歌われます。
これは夢には魂のかよう路があると考えたのことによっており、かの聖徳太子が寝殿のかたわらに「夢殿」という名の八角堂を建て、事あるごとにそこに忌みこもって眠ったのも(七日七晩こもったこともあるという)、すべて聖夢を得てそこで神仏のお告げを受け取らんとしていた訳です。
西郷信綱の『古代人と夢』によれば、「古代にあっては夢はたんに自然的に見られるだけでなく祭式的に乞われたのであり、しかも古代人はこの後者の方をいっそう大事としていた」のだそうですが、祭式である以上、日常とは違う手続きを要求される。
それは例えば「浄休して祈みて寐たり。各夢を待つ」(崇神紀)という記録などにも垣間見られます。
つまり、食を断ち、禁欲し、俗世間からみずからを隔絶させることで初めて、夢見の祭式は成立するものとされており、それは仏教伝来以前からの古い伝統に根差した暗黙の了解でもありました。
2月24日(月)にかに座から数えて「神託」を意味する八つ先のサインであるうお座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな古い伝統や先祖より受け継いだ回路から重要なメッセージをきちんと受け取ることがテーマとなっていくでしょう。
羽ばたきか骨休めか
「後ろを振り返っているあいだは、憂鬱で臆病だが、
自己を信じるところでは、未来もまた信じられる。
鳥よ、お前は鷲のたぐいなのか?
それともミネルヴァの寵児のふくろうなのか?」
『喜ばしき知恵』の中でニーチェがこのような断章を書き付けたとき、果たして彼の脳裏にはどんな像が浮かんでいたことだろうか。
今週のかに座はただ夢を見るだけでなく、注意深さと判断力とを何かしらの力を借りて発揮していかねばならないのです。
今週のキーワード
浄休