かに座
巣をつくろう
現在との共生のために
今週のかに座は、「水清ければ魚棲まず」をひっくり返して実践していくような星回り。すなわち、自らの情緒的・現実的ニーズを満たすような“巣”を繕い、調達し、整えていくこと。
歴史が、「洗練され、美しく仕上がったもの」ばかりとは限らないように、きれいすぎる巣はどこか人を落ち着かなくさせます。
逆に、頓珍漢なものやあきらかな傷やほころびが見て取れる、古ぼけた家財が一つや二つそこらに転がっていた方が、かえって居心地がよくなったりする。
これは隠れるところのなかった清い水の中に、身を隠すのにちょうどよい岩陰ができたようなものかも知れません。
言ってしまえば、過去とは道具なんです。人は、過去の力を借りることで現在から身を守ったり、あるいは逆に現在を強めることで過去の幻想を弱めたりして、バランスを取ったりしている。
その意味で、「水清ければ魚棲まず」とは、過去のないところには人は住めない、と言い換えることもできます。
今週は、現在と共生していくのにちょうどいい程度の過去をはかり、過去と現在との配分を適切なレベルに戻していくことがテーマとなっていくでしょう。
人生、やり直しはききませんが、見直しはできるんです。
過去へのあこがれと免れえない葛藤
フォークソングが流れ、街中を旧車や輪転がしをして遊ぶ子供が行き交った昭和30~40年代を懐かしむレトロブームは、2000年代初頭から一定の人気を博してきました。
しかしその時代(1955~1977)は日本が史上最も凶暴に、山谷を削り国土をゴミだらけにした時代でした。
では江戸時代なら懐古趣味を満たしてくれるかというと、もっと惨憺たる現実を含んだ社会と言えるでしょう。結局、楽園というのは幼年時代の記憶の中だけにあるものなのかもしれません。
過去と現在、そのどちらの世界が素晴らしいかという話はやめよう。
ただ、あちらからこちらへ移ってきたときに、何が失われてしまったのか。どこかぎこちなく、切実で、世界の鮮烈さを知っていたあの頃。
そんな輪郭のぼやけたひずみの中に、今週あなたは水の中に潜るようにスッと入っていけるはず。
今週のキーワード
過去は道具にすぎない